遺言執行者は、不動産や預金・株式などと同じ様に、遺言書の記載にしたがって自動車も相続人に帰属させる必要があります。
自動車も相続による名義変更を伴うことから、手続きの感覚は不動産によく似ています。
とはいえ、これも不動産と同様に、遺言書の記載によって必要になる手続きの内容や考え方ががらりと変わる、奥が深い手続きです。
また、「現物動産」としての引き渡しも伴いますし、駐車場問題など自動車特有の問題点もかなりあって、不動産や預金の相続に慣れている司法書士からすると、なかなか難しい手続きと感じます。
今回は、私(司法書士)が遺言執行者として関わった自動車相続についてお話しします。
《前提のお話し:遺言書の概要について》
遺言者:夫
遺言内容:○○の土地・建物、▲▲の預金、■■の株式、その他遺言者が有する一切の財産を、妻に相続させる。
(実際はこんなに単純な記載ではありません。)
遺言者:夫
遺言内容:○○の土地・建物、▲▲の預金、■■の株式、その他遺言者が有する一切の財産を、妻に相続させる。
(実際はこんなに単純な記載ではありません。)
いわゆる「特定財産承継遺言(具体的に財産を特定しているタイプ)」と「相続分の指定(具体的に財産を特定していないタイプ)」の 混合型の遺言書です。
この遺言書の中で自動車は、「その他遺言者が有する一切の財産」つまり「具体的に特定されていない財産」にあてはまります。
遺言書起案の段階では、不動産と同じように自動車も特定した(「登録番号」や「型式」「車体番号」など、車検証に載っている情報を記載した) 遺言書だったのですが、 公証役場から「自動車は「その他の財産」扱いにしてよいか?」との打診があり、変更した経緯があります。
蛇足ですが、自動車を特定した遺言書を公証役場に持ち込むと、かなりの確率で「その他扱いにしてほしい」と打診があります。 公証役場が遺言公正証書作成費用を算定する際には遺産の額がもとになるのですが、そのためには中古車価額の算定が必要となり、費用算出が煩雑になってしまうため、 というウワサがあります。。。 自動車を特定財産として記載すると、遺言書作成時点での評価額が必要になるから、ってわけですね。
遺言公正証書作成から時が経ち、遺言者がお亡くなりになって、いざ遺言執行となりました。
預金・株式や不動産は、いつものごとく遺言執行者が単独で手続きを行います。当然、相続人からの委任は必要ありません。
最後に自動車。これは特定されていない財産扱いなので、念のため管轄である東京陸運局に照会しました。
結果、「特定財産ではないので、相続取得者から遺言執行者への委任が必要」という趣旨の回答でした。
予想どおりでしたが、自動車も不動産と同様に
「対象財産が特定されている→遺言執行者自らの権限で手続き可」
「特定されていない→相続取得者からの委任が必要」
と言うことですね。
「特定されていない→相続取得者からの委任が必要」
今回は、自動車はまだまだ使用できる状態で、相続取得した妻も自らの使用継続を希望されており、 自宅駐車場をそのまま使用する、陸運局等への自動車の持ち込みも必要なし(自動車の種類によっては持ち込みが必要な場合があるようです。)、 という状況だったので、相続取得者から遺言執行者への委任状をもらっての手続き完了となりました。
(いわゆる「業際問題」もあるので、陸運局と慎重に検討しました。わりと大変でした。)
陸運局での手続きは、即日手続きが完了することや、申請書(陸運局に備え付けのひな形)への記載が「エンピツ(ボールペンでなく)」だったことなど、 驚いたことがたくさんありました。
そんなわけで、今回は遺言執行者が自動車の手続きを行う際の見落としがちかもしれないポイントを解説しました。
かなり専門家向けの解説になりましたが、遺言執行の際だけではなく、遺言書を作成する時点でもできるだけ検討しておいた方がよいポイントと思います。
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