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法定相続情報証明制度の利用方法|一覧図・委任状・申出書・添付書類の取り扱いについて

遺産相続の手続きで、戸籍の代わりになる「法定相続情報証明制度」。現時点(平成30年4月12日)で判明している情報をまとめました。

司法書士をはじめ、士業の間で何かと話題の「法定相続情報証明制度」。
運用開始から時間も経って、さまざまな情報が明らかになってきました。

また、平成30年3月29日付法務省民二第166号の通達により、相続登記で使用する場合の一覧図の「相続人の住所証明書」としての取り扱いが変更されるなど、少しずつ運用が改善されてきています。

そもそも法定相続情報ってなに?どんな手続きに使えるの?という疑問から、交付に必要な各種書類の取り扱いなど実務の細かいポイントまで、改正も踏まえて分かりやすくご説明します。


法定相続情報証明の申出方法(目次)

法定相続情報証明制度とは、戸籍の代わりに、法務局が発行してくれる「法定相続情報一覧図」という紙ぺら1枚で相続関係を証明できる制度のことです。
平成29年5月から運用が開始されました。

人が亡くなって相続が発生すると、遺産の名義を相続人に変更する相続手続きをすることになりますが、これまでは相続関係を公的に証明する書類といえばもっぱら戸籍の束でした。

どうして束になるほど膨大な戸籍が必要になるかというと、一番の原因は、亡くなった方の出生から死亡までの全ての戸籍をそろえる必要があるから。

亡くなった人の相続人は誰なのか?を判断するには、その人が生まれてから亡くなるまでの全ての身分関係を戸籍で確認するしかないんですね。

ですので、不動産や預貯金など遺産の名義変更をするときは、その都度手続先である法務局や各金融機関に膨大な分量の戸籍を提出することになります。

その結果、戸籍を受け取った手続先では、膨大な量の戸籍の解読作業を強いられていたわけです。

さらに、ひとつの手続きが終わって返却された戸籍の一式を、今度は別の手続先に提出する、ということを繰り返していくので、すべての手続きが完了するまでにはかなりの時間がかかっていたのでした。

それが、今後手続先には法務局発行の法定相続情報1枚を提出すればよいことになるので、手続先での戸籍解読の作業が不要になり、手続全体が簡単になってスピードアップする、というのが制度の趣旨ですね。

「この制度を利用すれば不動産の相続登記はもちろん、預金やら株式の相続手続きも簡単にできるようになるから、相続が発生したときはちゃんと手続きしましょう。」というわけです。

昨今話題になっている「所有者不明土地問題」対策として、相続登記を促す目的で国が創設した制度です。

戸籍の代わりになる書類を法定相続情報一覧図といいます。

この一覧図を交付してもらうには、以下の書類をそろえて所定の法務局に提出します。
手っ取り早く各書類の注意点を知りたい方は、クリックして飛んでくださいね。

  1. 法定相続情報一覧図
    (事前に作成して提出。法務局がこれに認証文をつけて交付してくれます。)
  2. 法定相続情報一覧図交付の申出書
  3. 各種の添付書類
ここからは、各書類の内容や記載方法、細かい注意点について説明していきます。



法定相続情報の申出をすると、「法定相続情報一覧図」が法務局から発行されます。
これが戸籍の束の代わりになる書類というわけですね。

この一覧図、あらかじめこちらで作成して法務局に提出します。
提出された一覧図に、法務局の登記官が認証文をつけて証明書として交付するという流れ。

どんなものかというと、家系図みたいな書面です。記載例(法務省出典)を見るとわかりやすいですね。

ちなみに「紙ぺら1枚」なんて言っていますが、1枚に収まらない場合は複数枚で作成しても大丈夫。割印も必要ありません。

いずれにしても、法定相続情報一覧図を作成するには、この一覧図に何を記載できるのか?を知っておかなければなりません。

戸籍の代わりになるぐらいなので、この「法定相続情報一覧図」にはいろいろな情報が記載されます。

少し例外もあるのですが、まずはどんな情報を記載できるのか?から見ていきましょう。


法定相続情報一覧図の記載事項

  1. 被相続人の氏名・生年月日・最後の住所・死亡年月日
  2. 相続開始時における同順位の相続人の氏名・生年月日・被相続人との続柄
  3. 申出人の表示
  4. 作成年月日
  5. 作成者(または代理人)の住所氏名・押印
  6. 相続人の住所(記載してもしなくても良い)

「被相続人の最後の住所」の注意点
最初の注意点は、「1」の「被相続人の最後の住所」です。

まずはよくあるパターン、被相続人の最後の住所を証明する戸籍附票や住民除票が取得できない場合どうするか?から。

「被相続人の最後の住所」を証明できない場合
被相続人の最後の住所は、被相続人を特定するうえで欠かせない重要な情報ですよね。

これを証明するには被相続人の戸籍附票か住民除票が必要になりますが、実はこれ、役所の保存期間がたったの「5年」なんです。

ですので、「役所で書類が廃棄されちゃってて、最後の住所を証明できません。」っていう事態は日常茶飯事。

法定相続情報一覧図ではこの場合に備えて、最後の住所の代わりに「最後の本籍」を記載してもいいですよ、とされています。

本籍は戸籍謄本に記載されていますが、戸籍謄本の保存期間は「150年」。戸籍附票や住民除票とは段違いに長いです。

最後の住所が証明できないなら、証明しやすい「最後の本籍」を代わりに記載できるというわけなんですね。

ただし、最後の本籍が記載された法定相続情報一覧図のみで、相続関係を証明する書類として認められるかどうかは、提出先によります。

そもそも法定相続情報一覧図を発行してくれる法務局でさえ、相続登記の際に「被相続人の最後の本籍」のみが記載された一覧図を提出するだけでは登記してくれません。

最後の本籍だけでは、被相続人と登記簿に載っている名義人が同一人物かどうか判断できないから、というわけですね。

ですので、相続登記で「被相続人の最後の本籍」のみが記載された一覧図を使う場合は、被相続人と登記名義人の同一性を証する情報として、別途「権利証」や「相続人全員の上申書」、「不在住証明書」などが必要になります。

被相続人の「最後の住所」と「最後の本籍」は併記可能
被相続人の「最後の住所」と「最後の本籍」は一覧図に併記することもできます。
手続先に少しでも多くの情報を提供したい場合は、「最後の住所」と「最後の本籍」を併記しておいたほうがいいですね。


「被相続人との続柄」の記載について
次の注意点は、「2」の被相続人との「続柄」です。

続柄は、被相続人からみた続柄を記載します。

被相続人を中心に見て「配偶者」「子」といった具合に記載するということですね。
相続人となる配偶者や子の住民票などに載っている続柄ではありませんので、要注意です。

表記のしかたは、「配偶者」や「子」という記載はもちろん、「妻」「長男」「二女」でも大丈夫。

また養子の場合、「子」と記載しても「養子」と記載してもOKです。

表記についてはかなり柔軟ですが、養子の場合は素直に「養子」と記載したほうが分かりやすいですね。

それから、兄弟相続の場合は、被相続人からみた関係を記載することになるので、「兄」「弟」「姉」「妹」と記載することになります。

兄弟との続柄(関係)は、戸籍には記載されないからですね。


「代襲相続」の記載方法

代襲相続人がある場合は、代襲相続人の続柄に「代襲者」と併記します。
「世田谷孫一郎(孫・代襲者)」といった具合。

被代襲者も表記しなければなりませんが、氏名や生年月日は記載できません
名前などは記載せず、「被代襲者(○年○月○日死亡)」とだけ記載するというわけですね。

ご参考に、法務省のHPで用意されている記載例をどうぞ。

(参考:代襲相続とは)
被相続人より先に本来の推定相続人が亡くなっていている場合に発生する相続のこと。

【例】
被相続人:世田谷一郎(平成29年9月30日死亡)
長男:世田谷長男(平成25年1月1日死亡)
相続人:世田谷孫一郎(世田谷長男の子)

本来は世田谷長男が世田谷一郎の相続人でしたが、世田谷一郎よりも先に死亡しています。
そのため、世田谷長男の子である孫一郎が代わりに相続人になります。これが「代襲相続」です。

長男を「被代襲者」、孫一郎を「代襲相続人(代襲者)」といいます。


「数次相続」の場合どうするか?

代襲相続と違って、数次相続の場合は一通の法定相続情報一覧図にすべての相続関係を載せることはできません。

それぞれの相続ごとに一覧図を作成することになります。

法定相続情報証明制度は、あくまでひとつの相続についてひとつの法定相続関係を証明する「一相続一証明」というわけですね。

(参考:数次相続とは)
被相続人が死亡後、相続手続きをしないでいるうちに相続人が死亡して、次の相続が発生すること。

【例】
被相続人:世田谷一郎(平成25年9月30日死亡)
一郎の相続人:世田谷長男(平成29年1月1日死亡)
長男の相続人:世田谷孫一郎(世田谷長男の子)

世田谷一郎が死亡して、その相続手続きをしないうちに相続人である世田谷長男が死亡しました。

世田谷孫一郎は世田谷長男の相続人であることはもちろんですが、一回目の世田谷一郎の相続に関しても、世田谷長男の相続人としての地位を引き継ぎます。

これが「数次相続」です。

代襲相続は「世田谷一郎死亡」によるひとつの相続のお話ですが、数次相続は「世田谷一郎」「世田谷長男」それぞれの死亡によるふたつの相続のお話というわけですね。

法定相続情報一覧図を作成するなら、「世田谷一郎分(相続人世田谷長男)」と「世田谷長男分(相続人世田谷孫一郎)」をそれぞれ別々に作成する必要があります。

一通目の「世田谷一郎分」の法定相続情報一覧図では、相続人世田谷長男はあたかも生きているものとして記載されることになります。

「相続放棄」「相続欠格」の場合の記載方法

ここ、重要です!

相続放棄をした人や相続欠格者がいる場合でも、一覧図には、通常の法定相続人として記載されることになります。

つまり一覧図では、相続人の表示とあわせて「相続放棄」とか「相続欠格」と記載することができないんですね。

どういうことかというと、例えば次の事例。
  • 被相続人:世田谷一郎
  • 第一順位の相続人:世田谷長男(子)、世田谷次男(子)

  • 息子である世田谷長男と世田谷次男が相続放棄したため、世田谷一郎の妹である世田谷妹子が相続人になった
    この場合、法定相続情報一覧図に相続人として記載できるのは「世田谷長男」「世田谷次男」の二人だけ。この二人の表示に「相続放棄」と書き加えることもできません。

    そして、長男と次男の相続放棄によって相続人となった「世田谷妹子」については、名前はもちろんその存在すら一覧図には記載ができないことになります。

    一覧図はあくまで「戸籍」の代わり。そして「法定相続関係を証明する書類」にすぎません。

    「相続放棄」や「相続欠格」の事実は戸籍には載りませんし、本来の法定相続関係とは一切関係のないお話。

    そのため、「相続放棄」や「相続欠格」については一覧図に一切記載ができない、というわけなんですね。

    これだと相続放棄がらみの事案で、戸籍の代わりとして一覧図を手続先に提出したところで、逆に混乱を招きかねません。

    なぜなら、提出する一覧図には実際に相続人になる世田谷妹子の情報が一切記載されていないわけですから。

    提出された金融機関としては「??」となっても仕方がありませんよね。

    ですので、相続放棄がらみの場合、無理して法定相続情報一覧図を使わずに、これまでどおり「戸籍一式と相続関係説明図」を提出するのも手ですね。

    どうしても法定相続情報一覧図を使うなら、「この一覧図はもともとの法定相続関係を示すだけの書類で、実際には相続放棄によって別の人が相続人になってますよ」ということを分かりやすく記載した説明書きが必須だと思います。

    この事例で例えると、相続関係を証明する書類として最低限必要になるのが、
  • 被相続人「世田谷一郎」に関する法定相続情報一覧図
    (世田谷一郎の出生から死亡までの戸籍謄本の代わり)
  •  
  • 「世田谷一郎の両親」それぞれに関する法定相続情報一覧図
    (世田谷一郎の直系尊属の出生から死亡までの戸籍謄本の代わり)
  •  
  • 相続関係説明図
    (相続放棄や被相続人の両親・妹に関する情報も一緒に載せる)
  •  
  • 相続放棄申述受理証明書
  •  
  • 提出書類の説明書
    (「法定相続情報一覧図はこういう性質の書類です」「法定相続人が相続放棄したので実体上の相続人は世田谷妹子です」を分かりやすく記載する)
  • といったところです。


    「廃除」の場合の記載方法

    「廃除」とは、被相続人に対して虐待などをして相続権をはく奪されること。

    これも本来の法定相続とは関係がないので、一見すると法定相続情報一覧図には廃除された相続人も法定相続人として記載しなければならないようにも思えます。

    が、「廃除」がある場合は、排除された相続人のことを一覧図に記載することはできません。

    理由としては単純に、「廃除された場合、その事実が戸籍に載るから」ですね。

    法定相続情報一覧図は、戸籍の代わりになる書類。
    戸籍に「廃除」の事実が記載されている以上は、廃除された相続人を法定相続情報一覧図に載せるわけにはいかない、というわけです。


    先に死亡した「配偶者・代襲者がいない子」は記載できない

    わかりやすく言うと、
  • 被相続人:世田谷一郎(平成29年9月30日死亡)
  • 配偶者:世田谷茶屋子(平成25年1月1日死亡)
  • 相続人:世田谷長男(一郎と茶屋子の息子)
  • 被相続人世田谷一郎の配偶者茶屋子は、一郎よりも先に死亡しています。
    ですので、一郎死亡による相続とは一切関係がないことになります。

    この場合、世田谷一郎に関する法定相続情報一覧図には、茶屋子の情報は一切記載できない、というわけですね。

    司法書士が相続手続きで作成する「相続関係説明図」では、配偶者茶屋子の情報を載せるのが当たり前です。

    理由は単純。配偶者が先に死亡していても、配偶者の情報を載せておかないと相続関係がすごくわかりづらくなってしまうから。

    でも、法定相続情報一覧図では、記載できるのはその名のとおり「法定相続に関する情報」のみ、なんですね。

    専門職ほど思わず死亡配偶者の情報を記載してしまいがち。
    ですが、法定相続情報では死亡配偶者の情報は一切記載できませんので、要注意です。


    相続分や登記簿上の住所は記載できない

    補足ですが、法定相続情報一覧図には各相続人の「相続分」や「登記簿上の住所」も記載することはできません。

    一覧図は戸籍の代わりにすぎないから、ですね。


    相続人の住所は記載できる(任意的記載事項)

    相続人の現住所は「記載したければ記載してもいいですよ」という取り扱いです。

    記載したところで相続人の住所証明書として一覧図を使用できるかどうかは手続先次第ですが、それでも実際の相続手続きで金融機関などに提出するのであれば、記載しておいたほうがいいですね。

    なお、もともと法定相続情報一覧図を発行してくれる法務局からして、相続人の住所が記載されている一覧図を住所証明書として認めていない取り扱いでした。

    相続人の住所が記載された法定相続情報一覧図を、相続登記の「相続人の住所証明情報」として利用することはできなかったんですね。

    それが平成30年3月29日付法務省民二第166号の通達により、相続登記で使用する場合は、相続人の住所が記載されている一覧図を住所証明書として取り扱うように運用が変わりました。

    そのため、相続登記の際に相続人の住所が記載された法定相続情報を添付する場合は、相続人の住民票は添付不要になったんですね。

    これは大きな前進です。

    さらに金融機関などでも同様の取り扱いになる可能性は高いと思いますが、現時点では、一覧図を金融機関に提出する際は、相続人の住民票が別途必要になるのか事前に確認しましょう。


    兄弟間相続の場合も、父や母の氏名などは記載しない

    兄弟姉妹間の相続の場合、その両親(直系尊属)が死亡していることになるので、一覧図には、父と母のことを記載せざるを得ません。

    ただ、その場合もかっこ書きで「(父)」「(母)」とのみ記載します。

    相続関係説明図だと、父・母の氏名やら死亡年月日も記載しますが、一覧図はあくまで「法定相続」の関係のみを証明する書類。

    「(父)」「(母)」としか記載できませんので要注意ですね。

    それから上の方でも説明していますが、兄弟間相続の場合、相続人の続柄は「兄」「弟」「姉」「妹」と記載することになります。



    法定相続情報一覧図を証明書として交付してもらうには、作成した一覧図・添付書類とあわせて「申出書」を提出する必要があります。

    申出書のひな形はこちら(出典:法務省)。 WORD形式なので、ダウンロードして編集できます。

    法務局のホームページに申出書の記載例もあります。 基本的なことは載っているので、参考にしてください。

    ここからは、法務局の記載例には載っていない細かい注意点です。

    「被相続人の表示」欄の注意点

    「被相続人の表示」欄には、「最後の住所」を記載する箇所があります。

    もし保管期間経過により戸籍附票や住民除票の取得ができない場合は、残念ながら最後の住所は書けません。

    代わりに「最後の本籍」を記載しましょう。
    本籍を記載するなら、「最後の住所」の「住所」の部分を二重線で消して、隣に「本籍」と記載したうえで、二重線のところに訂正印を押しておけば安心です。


    「申出人の表示」欄の注意点

    ここに申出人として記載できるのは、相続人(一覧図に記載される相続人、または「相続人の地位を相続により承継したもの」)のみ。
    相続人ではない、単なる親戚の方などは、一覧図の交付を申出することはできません。

    「被相続人との続柄」は、「子・妻」や「長男・二男・配偶者」でも構いませんが、あくまで被相続人からみた続柄を記載します。

    兄弟間相続の場合なら、「兄」「弟」「姉」「妹」ですね。

    申出人本人の住民票や戸籍に載っている続柄ではありませんので注意しましょう。

    また、申出人は一人ではなく複数の相続人による連名も可能
    一度交付された一覧図を紛失したり足りなくなった時は再交付の申出をすることになりますが、再交付の申出は申出人として記載された人だけができるので、後々のために相続人全員を記載しておくのも手ですね。

    押印は、代理人が申出する場合は不要です。


    「代理人の表示」欄の注意点

    代理人が申出する場合は、代理人の押印が必要です。

    また、申出人との関係のいずれかにチェックを入れます。
  • 後見人が申出する場合→「法定代理人」にチェック
  •  
  • 遺言執行者が申出する場合→「委任による代理人」にチェック
    (相続人からの委任状が必要です。)
  •  
  • 不在者財産管理人が申出する場合→「法定代理人」にチェック
  •  
  • 相続財産管理人が申出する場合→「法定代理人」にチェック

  • 「利用目的」欄の注意点

    金融機関の名称などは、記載する必要はありません。


    「必要な写しの通数・交付方法」欄の注意点

    法定相続情報一覧図は無料で発行してもらえるので、何通でも交付してもらえます。
    とはいえ、あまりに多くの枚数を請求するとツッコミが。

    10通ぐらいまでなら何も言われることはありませんが、それ以上の枚数を請求する場合は理由を聞かれますので、あくまで必要な枚数にとどめましょう。

    それから郵送で交付してもらう場合は、切手を貼った返信用封筒をお忘れなく。


    「被相続人名義の不動産の有無」欄の注意点

    この欄、「なんのために記載するの?」とちょっと気になるところですが、法務局が一覧図を発行する管轄権を持っているかどうかを確認するためだけの目的です。

    すぐ下の欄に「申出先登記所の種別」とあって、その中に「被相続人名義の不動産の所在地」にチェックマークが入れられるようになってますよね。

    ここにチェックを入れた場合、申出先の法務局の管轄内に被相続人名義の不動産が存在しないと、その法務局は一覧図を発行できないことになります。

    そのための記載欄というわけですね。

    ですので、「被相続人の本籍地」や「最後の住所地」、「申出人の所在地」の法務局に一覧図交付の申出をする場合は、この欄は「無」にチェックマークでもOK。

    「被相続人名義の不動産の所在地」にある法務局に交付の申出をする場合は、不動産の所在事項(○○市○○町○丁目○-○)か不動産番号(登記簿に載っている番号)をしっかり記載しましょう。


    「申出先登記所の種別」欄(一覧図交付の管轄について)

    法定相続情報一覧図は、下記のどの法務局(登記所)でも申請できます。

    1. 被相続人の本籍地を管轄する法務局
    2. 被相続人の最後の住所地を管轄する法務局
    3. 交付の申出をする相続人の住所地を管轄する法務局
    4. 被相続人名義の不動産の所在地を管轄する法務局
    この欄には、どの法務局に申請するかによってチェックマークを入れましょう。

    「被相続人名義の不動産の所在地」にチェックマークを入れるときは、「被相続人名義の不動産の有無」欄の記載を忘れずに。



    法定相続情報一覧図を交付してもらうには、事前に作成した一覧図、申出書のほかに添付書類が必要です。

    まずは添付書類の一覧からどうぞ。
    1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍・改製原戸籍含む)
    2. 被相続人の最後の住所を証する住民除票または戸籍附票
    3. 一覧図に記載した相続人の戸籍謄本(現在の戸籍謄本)
    4. 申出人が相続人の地位を相続により承継したものであるときは、これを証する書面
    5. 申出人の本人確認書類
    6. 代理人が申出するときは、代理権限を証する書面
    7. 相続人の住所を一覧図に記載するときは、住所証明書

    1.被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本

    被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本が必要です。
    相続手続きではおなじみの添付書類ですが、法定相続情報の交付申出に特有の細かい注意点も。

    戸籍は必ず「出生から」のものを
    相続登記の場合、出生からの戸籍でなくとも、生殖可能年齢とされる12歳ぐらいからの戸籍で申請が通る場合があります。
    が、法定相続情報の場合、必ず「出生」からの戸籍が必要になります。

    これは、不動産登記規則第247条第3項に「出生時からの戸籍」と明記されているからなんですね。

    規則に明記されている以上、生殖可能年齢からの戸籍はNGとなります。

    ただし、特則として相続登記と一覧図の交付を同時に申請する場合は、生殖可能年齢からの戸籍でOKという取り扱いになってます。


    2.被相続人の最後の住所を証する住民除票または戸籍附票

    上のほうでも説明してますが、住民除票や戸籍附票が廃棄されて取得できない場合は、被相続人の最後の住所を一覧図に記載することはできません。

    その場合は最後の住所に代えて「被相続人の最後の本籍」を記載するしかありません。


    3.一覧図に記載した相続人の戸籍謄本(現在の戸籍謄本)

    法定相続人全員の現在の戸籍が必要です。


    4.申出人が相続人の地位を相続により承継したものであるときは、これを証する書面

    これは具体的に言うと、数次相続の場合があてはまります。

    上のほうでも説明した事例でいうと、
    【例】
    被相続人:世田谷一郎(平成25年9月30日死亡)
    一郎の相続人:世田谷長男(平成29年1月1日死亡)
    長男の相続人:世田谷孫一郎(世田谷長男の子)

    数次相続の代表的なパターン。
    はじめに世田谷一郎が死亡して、その相続手続きをしないうちに相続人である世田谷長男が死亡した場合です。
    世田谷孫一郎は世田谷長男の相続人であることはもちろんですが、一回目の世田谷一郎の相続に関しても、世田谷長男の相続人としての地位を引き継いでいます。
    この一連の相続を法定相続情報一覧図にする場合、下の2つの一覧図を作成することになります。
    (1)「世田谷一郎分(相続人世田谷長男)」申出人:世田谷孫一郎
    (2)「世田谷長男分(相続人世田谷孫一郎)」申出人:世田谷孫一郎
    申出人はどちらも「世田谷孫一郎」ですが、実は申出人としての性質が異なります。

    (2)は単純に、世田谷長男の直接の相続人として申出人になっています。
    一方で(1)の申出人世田谷孫一郎は、世田谷一郎の相続人である世田谷長男の、相続人としての地位を承継した者、ということですね。

    この(1)のパターンで申出する場合は、「申出人が相続人の地位を相続により承継したものであることを証する書面」が必要になる、というわけなんです。

    「申出人が相続人の地位を相続により承継したものであることを証する書面」とは、世田谷長男の出生から死亡までの戸籍謄本のこと。

    要は、数次相続の場合、「世田谷一郎の出生から死亡までの戸籍謄本」と申出人「世田谷孫一郎の現在の戸籍謄本」に加えて、「世田谷長男の出生から死亡までの戸籍謄本」も必要になるんですね。

    書いている自分でも訳が分からなくなりそうですが、結局のところ、数次相続の法定相続情報一覧図の交付をしてもらうには、さらにたくさんの戸籍謄本が必要になるというお話です。


    5.申出人の本人確認書類

    申出人の本人確認書類とは、具体的に言うと住民票や運転免許証のコピーなど。
    これも細かい注意点がたくさんある添付書類です。


    本人確認書類のコピーを提出する場合は「原本証明」が必要
    原本証明とは、コピーの右下に「上記は原本と相違ない 世田谷孫一郎」と記載して、「このコピーは原本を写したものに間違いありませんよ」と自分で証明すること。

    申出人自身が署名、または記名押印します。

    申出人自身っていうところがミソ。代理人の原本証明ではだめなんですね。

    相続登記と同時申請する場合の原本証明の特則
    原本証明は申出人本人がするのが原則ですが、相続登記と同時申請する場合に限り、本人確認書類のコピーの原本証明は代理人がしたものでOKです。

    これは司法書士にとっては非常にありがたい特則ですね。

    司法書士は相続登記を申請する場合、必ず相続人の本人確認をします。

    本人確認の際にはあわせて身分証のコピーも取りますので、代理人である司法書士が自ら原本証明をすればよいというわけです。


    申出人の本人確認書類は必ず「原本を提出」
    申出人の本人確認書類は、提示では足りず、必ず「原本を提出」することになります。
    原本還付してもらうこともできません。

    ちょっと分かりづらいので順を追って説明すると、本人確認書類として提出する書類としては、以下のパターンが考えられます。
  • 住民票の原本(コピーではないので原本証明不要)
  • 住民票のコピー(原本証明したもの)
  • 運転免許証等、身分証のコピー(原本証明したもの)
  • 上のどの書類を提出する場合でも、全て「本人確認書類の原本」とみなされます。
    原本証明がされた住民票のコピーも運転免許証のコピーも、それが原本という考え方ですね。

    そして、提出した本人確認書類は還付することはできないという取り扱い。

    ですので、もし役所で取得した住民票の原本を他の手続きでも使いたいという場合は、住民票の原本をそのまま提出してしまうと還付されませんので、コピーを取って原本証明して提出すれば良いということになります。

    手元に残った住民票の原本は、そのまま他の手続きで使いましょう。

    司法書士が代理人として法定相続情報一覧図の交付と相続登記を同時に申請するのであれば、法定相続情報の交付申出には本人確認書類として「住民票のコピー(司法書士が原本証明)」を添付して、相続登記には相続人の住所証明情報として還付処理した住民票のコピーと住民票の原本を添付すればよいことになりますね。


    6.代理人が申出するときは、代理権限を証する書面

    代理人が申出する場合は、「法定代理人」の場合と「委任による代理人」の場合があります。
    それぞれの場合の代理権限を証する書面は、以下のとおりです。

    法定代理人の場合
  • 親権者または未成年後見人
    ⇒戸籍謄本(作成期限なし)
  •  
  • 成年後見人または、代理権付与のある保佐人・補助人
    ⇒後見登記等ファイルの登記事項証明書(作成期限なし)
  •  
  • 不在者財産管理人または相続財産管理人
    ⇒選任審判書

  • 委任による代理人の場合
    委任による代理人になれるのは、親族か遺言執行者、8つの専門職(弁護士・司法書士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士・行政書士)のみ。

    代理権限を証する書面は、
  • 委任状
  • 専門職が所属する団体(司法書士会や弁護士会)の「会員証コピー」
  • 代理人が法人(司法書士法人など)の場合は、法人の「登記事項証明書」
  • 委任状は、法務省出典のひな形をどうぞ。
    WORD形式なので、住所や名前を変更してお使いください。

    ご参考までに、当事務所で使っている委任状のひな形はこちらです。
    スマートフォンなどで画像が表示されない方は、こちらからどうぞ。
    法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出の委任状記載例


    7.相続人の住所を一覧図に記載するときは、住所証明書

    法定相続情報一覧図に「相続人の住所」を記載できるのは上のほうで説明しましたが、この住所を記載する場合は「相続人の住所証明書」として住民票を添付する必要があります。

    かつては、法定相続情報に相続人の住所を載せた場合でも、一覧図はあくまで「戸籍の代わり」にしかならない取り扱いでした。

    そのため、後に相続登記で相続人の住所が記載された一覧図を添付したところで、相続人の住民票も再度添付しなければならなかったのですが、平成30年4月1日から取り扱いがかわって、相続登記で使用する場合は相続人の住所の記載があれば住所証明書として取り扱う運用に変わっています。

    ですので、今後は一覧図には相続人の住所を記載しましょう。

    そもそも相続人の住所すら載っていない法定相続情報というのはなんとなく気持ち悪い感じがしますし。


    添付書類は原本還付できるか?

    実は、法定相続情報証明制度では、原則として原本還付という考え方がありません。

    そのため、添付書類はそのまま返却されるのが大原則です。

    還付してもらいたい書類の写し(コピー)をつける必要すらないんです。

    結構おどろきですが、そもそも原本還付の規定がないためこういう取り扱いになっているんですね。

    添付書類のうち、そのまま返却される書類
    コピーの添付すらしなくてもそのまま返却される書類は以下のとおりです。
    1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍・改製原戸籍含む)
    2. 被相続人の最後の住所を証する住民除票または戸籍附票
    3. 一覧図に記載した相続人の戸籍謄本(現在の戸籍謄本)
    4. 申出人が相続人の地位を相続により承継したものであるときに添付する戸籍謄本
    7. 相続人の住所を一覧図に記載するときに添付する住所証明書
    これらの書類は、なにもしなくてもすべて自動的に返却してくれるというわけですね。

    添付書類のうち、原本還付しなければならない書類
    例外的に原本還付しなければならない書類があります。
    それは「6.代理人が申出するときに添付する代理権限を証する書面」。

    法定代理の場合に添付する戸籍や後見登記事項証明書、選任審判書はもちろん、委任状も原本還付が可能です。

    そもそも法定代理の場合の戸籍・後見登記事項証明書・選任審判書って、親権者であったり後見人であったり財産管理人であることを証明する非常に重要な書類ですよね。

    なので、通達によって「代理権限証明書は原本還付できる」と明記されました。

    要注意なのは、還付処理しておかないと原本を返してもらえないということ。

    添付書類はそのまま返却が原則の法定相続情報証明制度では、かえって代理権限を証する書類の原本還付を忘れがちに。

    これを忘れると大変なことになってしまうのでご注意を!

    それから蛇足ですが、司法書士等が代理人になる場合に添付する会員証のコピーは原本還付できません。いらないですけどね。

    相続登記と法定相続情報一覧図交付申出の委任状を一枚で兼ねる場合の注意点
    この場合は、一覧図の交付申出書と相続登記それぞれに委任状の添付が必要になります。
    一覧図の交付申出の際は、必ず委任状の原本還付をしましょう。

    相続登記と同時に申請する場合は、還付処理した委任状のコピーを一覧図の申出書に添付して、委任状原本は相続登記に添付すればOKです。



    相続登記がらみの注意点は上のほうでも個別に説明していますが、バラバラでわかりづらいのでここでまとめておきます。
    1. 相続人の住所が記載された一覧図は、相続登記で相続人の住所証明書として利用できる (平成30年3月29日付法務省民二第166号)
    2. 一覧図に記載された被相続人の最後の住所と登記簿上の住所が一致する場合は、被相続人の同一性を証する情報として使える

    相続登記と一覧図交付申出を同時申請する場合の特則まとめ

    1. 被相続人の戸籍は出生からのものではなく、生殖可能年齢からのものでOK
    2. 一覧図交付申出人の本人確認書類として身分証等のコピーを提出する場合、原本証明は代理人がしたものでOK


    これは細かいところですが、重要です。
    オンライン申請で登記原因証明情報の添付に問題があると一発却下ですので。

    法定相続情報一覧図は、あくまで戸籍の代わりという取り扱い。
    となると、一覧図を相続登記の際に添付した場合に、相続関係説明図は必要になるのか?という疑問も出てきますよね?

    相続登記で相続関係説明図を添付するのは、そもそも戸籍を返却してもらうため。

    それならば、戸籍の代わりである法定相続情報一覧図の返却が不要なら、相続登記を申請する際に相続関係説明図はつけなくて良いのでは?と。

    こうなると、オンラインで相続登記を申請するときにPDFするのは、法定相続情報一覧図のみで良い!という結果にもなりそうです。

    が、ここで忘れてならないのは、相続関係説明図には「遺産分割」や「相続放棄」も記載されているってこと。

    オンライン申請では、遺産分割協議があった場合も、申請時の登記原因証明情報としては相続関係説明図のみPDFで添付すればよい取り扱いになってますよね。

    戸籍やら遺産分割協議書は、別途、郵送なり窓口で原本を提出します。

    なんでこんな取り扱いかというと、相続関係説明図には、遺産分割協議の結果、誰が不動産を取得したのかが記載されているから。

    相続関係説明図を見ればとりあえず誰が不動産を取得したのかはわかるから、オンラインで申請する時点では遺産分割協議書はPDFで添付しなくてもいいですよ、というわけです。

    一方で、法定相続情報一覧図には、遺産分割とか相続放棄といった情報は一切記載されません。

    これではオンライン申請時の登記原因証明情報としては、不適格ということになりますね。

    ですので、戸籍の代わりに法定相続情報一覧図を使う場合でも、オンライン申請の際は相続関係説明図をPDFで添付しないと、却下になる可能性が高い。怖いですね。



    せたがや相続相談プラザを運営するフィデス世田谷司法事務所は、世田谷区三軒茶屋の司法書士事務所です。
    法定相続情報証明制度は、依頼人にとって利益になりそうであれば積極的に利用したいと考えています。

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