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相続の基礎知識QA

【パターン別】連帯債務者の一人が死亡した場合の相続・免責的債務引受による抵当権変更登記について

債務引受する人が誰なのかによっては、ちょっと特殊な登記になる場合があります。

連帯債務者のうちの一人が亡くなって、その連帯債務を最終的に誰かにまとめて帰属させたい。
金融機関からの依頼で、年に何回かはこんな登記をすることがあります。

相続がらみの連帯債務者変更って、ものすごく難しいんです。
いつも慎重に対応するのですが、ちょっと珍しい案件に出くわしました。

この案件のパターンは、書籍はもちろんインターネットでも情報を探すことができなかったので、記事に書いてまとめてみます。

この記事を読んでくださる方は、私と同職である司法書士の方が多いと思いますが、参考にしていただけたら嬉しい限りです。

連帯債務者の死亡による抵当権変更登記(相続・免責的債務引受)



まずはよくあるパターン。内容はこんな感じです。
実体関係もわかりやすくなるように、債権額と各連帯債務者の負担額も記載します。

【抵当権の内容】
     
  1. 連帯債務者:「A」「B」
  2.  
  3. 債権額:4,800万円
  4.  
  5. 連帯債務の負担額
    A:4,800万円
    B:4,800万円
で、Aが死亡して、法定相続人である「B、C」がAの連帯債務を相続。
後に債権者と話がまとまって、Cの連帯債務をBが免責的に引き受ける。

これが典型的なパターンですよね。

文章で書いているととても分かりづらいのでちょっとまとめてみると、実体上の連帯債務者の変遷は以下のとおりになります。

  1. まず「相続」によって、実体上の連帯債務者は「B・B・C」になります。

    ≪連帯債務の内訳≫
    【B】(もともと負担している連帯債務:負担額4,800万円)
    【B、C】(相続した連帯債務:負担額はそれぞれ2,400万円)



  2. 次に、免責的債務引受によって連帯債務者は「B・B」ってことになります。

    ≪連帯債務の内訳≫
    【B】(もともと負担している連帯債務:負担額4,800万円)
    【B】(Cの連帯債務を免責的に引き受けてまとまった分:負担額4,800万円)
う~ん。まとめてもとても分かりづらいですね。。。

これによってなすべき抵当権変更登記は以下のとおり。

【1件目】
登記原因:○年○月○日連帯債務者Aの相続
変更後の事項:連帯債務者 B C

【2件目】
登記原因:▲年▲月▲日連帯債務者Cの免責的債務引受
変更後の事項:連帯債務者 B
結果、抵当権の被担保債務を負担する人は「B」ただひとりになるってわけですね。

論点としては、最終的に債務者は一人になるんだから、変更後の事項は「連帯債務者」ではなくて「債務者」で良いのでは?というところですが、これについては「連帯債務者」が正解です。

もともとBが負担していた連帯債務と、Aから相続・Cから引受して負担することになった連帯債務は別個独立していることになるので、「債務者」ではなく「連帯債務者B」として登記しなければなりません。

公示上もわかりづらいといえばわかりづらいですが、一応ここが「連帯債務者」となっている以上は、もともとBが負担していた連帯債務と相続・債務引受によって負担することになった連帯債務は別物です、ってことが登記上読み取れるってわけです。

このパターンは、書籍「登記インターネット」にも載っていますし、インターネットの検索でも見つけられます。


やっと本題です。
出くわした珍しいパターンっていうのが、もともとの連帯債務者ではない人に、相続した連帯債務を引き受けさせるというものです。

いつものパターンだと最終的に債務を負担する人は一人(Bのみ)になるのですが、このパターンだと最終的な連帯債務者は「BとC」になります。

抵当権の内容は先ほどと同じく以下のとおり。

【抵当権の内容】
     
  1. 連帯債務者:「A」「B」
  2.  
  3. 債権額:4,800万円
  4.  
  5. 連帯債務の負担額
    A:4,800万円
    B:4,800万円
そして、Aが死亡して法定相続人「B、C」がAの連帯債務を相続するってところも同じです。

  1. 「相続」によって、実体上の連帯債務者は「B・B・C」に。

    ≪連帯債務の内訳≫
    【B】(もともと負担している連帯債務:負担額4,800万円)
    【B、C】(相続した連帯債務:負担額はそれぞれ2,400万円)

違うのがここから。
BとCが相続した連帯債務をBではなくて「C」が引き受けるってところです。

  1. 免責的債務引受によって連帯債務者は「B・C」になります。

    ≪連帯債務の内訳≫
    【B】(もともと負担している連帯債務:負担額4,800万円)
    【C】(Bが相続した連帯債務をCが引き受けてまとまった分:負担額4,800万円)
この案件の依頼を受けて疑問に思ったのが、いつもどおりの方法で抵当権変更登記をやってしまったら、Cが引き受けた連帯債務に「もともとBが負担していた連帯債務」も含まれるかどうか、非常にわかりづらい登記が出来上がってしまうのでは?ということでした。

どういうことかというと、いつもどおりの変更登記だと、

【1件目】
登記原因:○年○月○日連帯債務者Aの相続
変更後の事項:連帯債務者 B C

【2件目】
登記原因:▲年▲月▲日連帯債務者Bの免責的債務引受
変更後の事項:連帯債務者 C
この登記が完了した場合、2件目の変更登記による付記登記には「▲年▲月▲日連帯債務者Bの免責的債務引受」と「連帯債務者C」が記録されることになります。

これだと、現在の連帯債務者が「BとC」なのか「Cのみ」なのかを判断するのが、ものすごく難しい。

つまり、登記簿を見ても、Cが全ての連帯債務を引き受けてたった一人の債務者になったのか、それともCが引き受けたのは相続した連帯債務のみで最終的にはBとCの二人が連帯債務者なのかどうかが、判断しづらいわけです。

もちろん、もともとの抵当権の主登記に記載されている「連帯債務者B」の部分は下線で抹消されないので、「Bも連帯債務者であることは読み取れる!」という考え方もありますが、仮にも誰が連帯債務者であるのかを公示すべき登記簿で、その判断基準が主登記の下線抹消があるかどうかだけというのでは、さすがにまずかろうと思ったわけです。

早速法務局と協議した結果、登記内容は以下のとおりとなりました。

【1件目】
登記原因:○年○月○日連帯債務者Aの相続
変更後の事項:連帯債務者 B C

【2件目】
登記原因:○年○月○日連帯債務者Aの相続債務について▲年▲月▲日連帯債務者Bの免責的債務引受
変更後の事項:連帯債務者 C
これなら2件目の変更登記による付記登記にも「○年○月○日連帯債務者Aの相続債務について▲年▲月▲日連帯債務者Bの免責的債務引受」とばっちり記載されます。

登記簿を見た人も、「なるほど。最終的にはBとCふたりとも連帯債務者なんだな。」ってことが(ちょっとは)わかりやすくなるってわけです。

完了した登記簿を見て、「おお!これは美しい!」なんて感動しつつ「我ながら浮世離れした美的センスだぜ。。。」なんて哀愁も漂わせたのでした。

余計なこともたくさん書いてしまいましたが、このパターンの抵当権変更登記に関する情報を私がどうしても見つけられなかったので、今後同様の案件に出くわした方がこの記事を参考にしてくれればとてもうれしいです。

もちろんこの記事の内容で登記が通るかどうかについては責任を負いかねますので、ご了承ください。

それから、一応登記原因証明情報の「登記の原因となる事実又は法律行為」に記載した内容も載せておきます。

最終的な連帯債務者が「BとC」ってことに疑義がないように作成したものですので、参考にしていただければ幸いです。

【登記の原因となる事実又は法律行為】
(1)平成▲年▲月▲日、債権者□□銀行株式会社と、連帯債務者Bおよび連帯債務者Cは、本件不動産の抵当権(平成×年×月×日○○法務局○○出張所受付第○○○号)の被担保債権である平成×年×月×日○○契約に基づくB(負担部分2,400万円)、C(負担部分2,400万円)の□□銀行株式会社に対する連帯債務について、Cが免責的に引き受ける旨の免責的債務引受契約を締結した。

(2)本契約にかかる債務は、平成○年○月○日連帯債務者Aから相続した連帯債務である。

(3)よって、平成▲年▲月▲日、本件抵当権の連帯債務者は、Cに変更された。




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