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相続放棄をすれば、空き家と縁が切れますか?

空き家にかかる固定資産税を支払う必要はなくなりますが、管理責任という負担からは逃れられません。

家庭裁判所で相続放棄の手続きをすると、亡くなった方の借金や税金などのマイナスの遺産はもちろん、不動産も一切相続することはなくなります。

老朽化した建物がある地方の土地など、売却したり賃貸に出すこともできない不動産を相続した場合でも、固定資産税などは毎年課税されます。

経済的な価値がないうえに税金ばかりかかる空き家と完全に縁を切るために、相続放棄をしたいと考える方は多いです。

相続放棄をした場合は、相続権は次の順位の相続人に移るので、一見すると空き家と縁が切れるようにも思えます。
ただし、現実的には難しい問題があります。


空き家の相続放棄(目次)

相続放棄をした場合も、「次に相続人になった人が相続財産を管理できるようになるまで、自分の財産を管理するのと同じぐらいの責任をもって管理しなければならない」という民法の規定があります。

簡単に言うと、「相続放棄した場合も、次の人が管理できるようになるまでは、十分に注意して管理し続けてくださいね」という意味になります。

つまり、相続放棄をすれば、その空き家は自分のものになることはないので固定資産税を払う必要はなくなりますが、次に空き家を管理できる人が現れるまでは、自分で管理し続けなければならないのです。

人が住まなくなった建物は、すごいスピードで劣化していきます。とくに木造の家屋は、壁が崩れ落ちそうになったり、瓦屋根が今にも落ちてきそうになったりと、かなり危険な状態になります。

では、相続放棄をした空き家が危険な状態になって、もしそれが原因で人にけがをさせたとすると、その責任を問われるのは誰でしょうか?

民法717条には、次の規定があります。
【民法717条】
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う
これは、土地にある空き家など工作物の管理不足によって、他人が怪我などをした場合の責任を定めた条文です。
「瑕疵」というのは、きちんと管理していないせいで壁が崩れたりすることを意味します。

空き家が原因で他人にけがをさせてしまった場合は、その空き家の「占有者」が責任を問われることになります。

「相続放棄をしたけれど、次に空き家を管理できる相続人がいない」という状態だと、空き家の占有者として他人に損害を与えたことへの責任を負う可能性が高いです。

そのため、相続放棄をした場合でも、空き家が危険な状態にならないように最低限の管理をする必要が出てきます。

しかし、売却したくても買い手がつかず、賃貸に出したくても借り手が現れないような建物に、管理費用を出費できるでしょうか?
そもそも管理費用の負担を免れるために、相続放棄という選択が頭に浮かんだのではないでしょうか?

また、空き家を取り壊して更地にすれば売却できるような土地であれば、誰も相続放棄などしないはずです。

かといって、相続放棄をした後に放置して、管理責任を問われるような事態になることは避けなければなりません。

民法が予定している流れとしては、関係者が全員相続放棄をして相続人がいなくなった場合は、家庭裁判所から選任された「相続財産管理人」が遺産を管理する責任を引き継ぐことになっています。

つまり、空き家の管理責任から完全に逃れるためには、相続放棄の手続きだけでは足りず、相続財産管理人選任の申し立てもしなければならないのです。

しかし、相続財産管理人の選任を申し立てるには、家庭裁判所に納める費用がかかることになります。
相続財産の中から相続財産管理人の報酬などを支払える場合ならよいのですが、相続放棄がされているケースでは、そもそも相続財産がマイナスのため、相続財産管理人への報酬などを捻出する余地はありません。

そのため、相続財産管理人の選任を申し立てる際には、その報酬や経費に充てるための「予納金」が必要になります。予納金は少なくとも数十万はかかるとされています。

そして、予納金を収めることができないと相続財産管理人の選任を申し立てることはできないので、空き家の管理責任を免れることもできない、ということになります。

ここまで考えると、管理責任を免れるために高額な予納金を納めるぐらいなら、価値がないとはいえいったん空き家を相続して、年間数千円~数万円程度の固定資産税を負担しながら様子を見るという、いってみれば問題解決の先送りという選択をせざるを得ないことがほとんどです。



最近は、世田谷区でも空き家が目立つようになってきました。

もっとも世田谷区内であれば土地に資産価値があるので、しばらくすると取り壊されて、再び土地が活用されることがほとんどです。
取り壊しもあっという間で、木造のアパートの場合など、気付けば更地になっていたりします。

これに比べると地方の空き家問題は本当に解決が難しい、根深い問題です。
世田谷区で亡くなった方の場合も、先祖代々の地方の土地や誰も住まなくなった空き家が遺産に含まれていることは本当によくあります。


相続放棄をしたからと言って空き家とは簡単に縁を切れない現実があります。
空き家問題を考える際には、空き家を含めた遺産全体の状況や各相続人の将来の予定など、状況を正確に把握することがとても大切です。

なお、相続放棄のその他の注意点については、こちらに詳しい記事がございますので、よろしければご参考になさってください。


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