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サブリースの不動産は相続すべきですか?

サブリース(家賃保証付きの一括借り上げ)の不動産は、問題点が多くあります。相続の際に注意すべきポイントをご説明します。

相続が発生して親の不動産を調査してみたら、「サブリース」の不動産があった、という事例が増えています。

サブリースの不動産には、特有のややこしい契約がついています。

そのうえ、建築時に借り入れた多額の建築費と、それを担保するための抵当権がつけられています。

親の資産について日ごろから家族でしっかり話し合っていたという場合を除いて、不安に思う人がほとんどでしょう。

相続財産を調査したらサブリースの不動産があった場合は、どうしたらよいのでしょうか?

遺産にサブリースの不動産があった場合の注意点(目次)

サブリースとは、アパートなどの賃貸不動産を管理会社(サブリース業者)に一括で借り上げさせて、契約期間中の家賃保証を受けられるサービスです。

数年前から「30年一括借り上げ」とか「長期間借上賃料固定」といった広告が盛んにおこなわれています。

大家さんにとってみれば、アパートの部屋が埋まらない空室リスクなどに関係なく、長期間安定した収入を得られると魅力的に感じるかもしれません。

しかしながら、サブリースは落とし穴も多いです。


長期間安定した収入をもたらし、最初に借りた建築費用の返済も無理なく進めることができ、返し終われば立派な資産を子供に残せると、一見するといいこと尽くしのサブリース。

ですが、契約内容によっては大きなリスクが潜んでいます。

「家賃保証」と「賃料減額」

アパートの部屋が埋まろうが埋まるまいが、一定の借上賃料がサブリース業者から大家さんに支払われます。

「家賃保証」や「空室保証」とうたわれています。

ただし、最初に決めた額の借上賃料が支払われるのは、当初5年間~10年間のみで、以降は「○年ごとに借上賃料を協議によって見直す」と契約書で定められています。

借上賃料の改定期間は、2年から5年が多いようです。

これは、当初の家賃保証の期間が過ぎれば、以後は契約更新のたびに借上賃料(大家さんの収入)が下がっていくことをことを意味します。

例えば、当初の家賃保証期間10年が経過すれば、建てたアパートも築10年になります。

築10年のアパートで、新築の時と同じ家賃で入居者を集めるのは至難の業です。

今後さらに人口が減って、アパートの入居者集めの競争はますます激化していきます。

都市部の駅近くなど、よほど条件が良いところにアパートがあるならまだしも、地方の田んぼの真ん中にあるような場合は問題です。

借上契約の更新のたびに、サブリース業者側から「現状の家賃では入居者が入らず空室だらけになってしまう」などさまざまな理由をつけられて、借上賃料の減額を迫られることになります。


当初の賃料保証期間中でも減額請求が認められる場合がある
大家さんにとっては、「最悪でも当初の保証期間中は決まった借上賃料を受け取れる」ということが大きな安心材料になっているかと思います。

しかし、残念ながら当初の保証期間中でも、借上賃料の減額が認められる場合があります。

平成15年10月21日と23日に、最高裁判所の判決で決着がついています。

簡単にまとめると、以下の趣旨になります。

     
  1. サブリース契約といえども、普通の賃貸借契約と同じ。
  2.  
  3. だから「借地借家法32条1項」で定められている「賃料の減額請求」だって、借主であるサブリース業者に認められる。
  4.  
  5. この減額請求は、強制的に適用される法律。
  6.  
  7. だから、たとえ契約書で保証期間中は賃料を減額しないとうたっていても、サブリース業者は賃料の減額請求ができる。
  8.  
  9. ただし、減額の幅については、家賃保証をしていたことも含めて、いろいろな事情を総合的に見て決めなさい。
この判決に対しては、「借地借家法32条1項の減額請求が強行規定(強制的に適用される法律)なら、どうして減額の幅について決めるときに、本来意味のないはずの「家賃保証をしていた事情」を考慮しなければならないの?」といった批判もあります。

いずれにしろサブリース業者は、この借主保護の意味合いの強い規定によって、保証期間中でも大家さんに対して借上賃料の減額を請求できることになりました。


サブリース業者からの契約解除

借上賃料の減額は、大家さんにとっては致命傷になりかねない深刻なダメージになるので、つっぱねたくなるのが普通でしょう。

しかし、大家さんが減額の協議を受け入れない場合は、サブリース業者から一方的に「契約の解除ができる」旨の条項が契約書に入っています。

契約を解除されてしまうと、多額のローンが残った築十数年の中古アパートと、賃貸経営のノウハウを何も蓄積していない大家さんが残される、という構図です。

もしサブリース業者からの契約解除を不当として争うのであれば、裁判で決着をつけることになります。

これも期間や費用がかかるのはもちろん、基本的には大家さんもサブリース業者と対等の不動産事業者として扱われるので、簡単に勝つことはできません。

実際のところサブリース業者と一般の大家さんとでは、「巨人とアリの戦い」と言えるほど力の差があるにも関わらずです。


免責期間

サブリース契約では、「新築から3か月間は借上賃料を大家さんに支払いません」という「免責期間」が定められていることがあります。

契約によっては、新築時のみでなく、入居者が退去してから数か月間の免責期間を設けている場合もあるようです。

借上賃料の減額に比べればもはや些末な問題ともいえますが、これらも大家さんの資金繰りに悪影響を及ぼします。


サブリース事業者が利益を上げる仕組み

サブリース契約は、アパートの建設とワンセットになっています。

実は、利益はサブリース契約からではなく、アパートの建設費で確定されています。

実際の相場より4割程度高い価格でアパートを建てるので、サブリース事業者側は、ここですでに莫大な利益を得ているのです。

建設業者とサブリース業者は、グループ企業であることがほとんどです。

アパートを建設した後は、大家さんに支払うお金(借上賃料)を少なくし、反対に大規模なリフォーム工事などで大家さんから払ってもらうお金を多くすることで、できるだけ利益につなげていくことになります。


入居者がアパートを退去した後の普通の原状回復はサブリース業者が負担することになっていますが、大規模な修繕やグレードアップのための工事は、すべて大家さんが負担することになります。

この費用負担自体は、大家さんの所有物であるアパートの価値を高めるものなので、大家さんが負担するのが当然といえます。

しかし、実際に大規模な修繕工事などを担当するのは、サブリース業者が指定する関連会社です。

相場よりも高い修繕費用がかかってもおかしくはありません。


団信とは、「団体信用生命保険」の略語で、自宅やアパートのローンを組む際に加入する生命保険です。

団信に入っていると、加入者がローンを残して亡くなったときに、生命保険金が金融機関に支払われて、残りのローンの返済に充てられます。

団信は、自宅の住宅ローンを借り入れる場合だけでなく、アパートなどの収益用不動産のローンでも加入している場合があります。

団信に入っていれば、残りのローンを完済できるか、保険金が足りず完済できないとしても、大幅にローンを減らすことができます。

相続財産にサブリースの不動産がある場合は、まず故人が団信に加入していたかどうかを確かめましょう。

団信については、亡くなった人の住宅ローンが残っているのですが、どうしたらよいですか?でも説明していますので、よろしければご参照ください。


相続税対策を目的にサブリースの不動産を建てる場合、団信に加入しないことがあります。

相続税対策の主な手段として、亡くなったときに借金があることで遺産全体の評価額を減らす、というものがあります。

亡くなったときに団信で借金が帳消しになってしまうと、そもそも相続税対策にならないという考え方です。

また、アパートローンの団信に加入する場合は、借り入れに0.3%程度の金利が上乗せされます。

これも団信が敬遠される一因です。

返済計画をしっかり確認する

金融機関との契約によりますが、アパートの建築費用を借り入れる場合、期間中に返済利率が大幅に増える場合があります。

「変動金利」で借り入れをしていた場合です。

もっとも重要なことは、今後収入となる借上賃料が減って、さらに金利が上がった場合にその負担に耐えられるか、です。

相続が発生した時点では、入ってくる借上賃料から銀行の返済や税金を引いても黒字になるとしても、今後の状況次第で簡単に赤字になってしまうこともあるのです。


余裕がないなら、相続後の売却を検討したいが、、、

もし相続しても、今後の状況によっては銀行への返済も怪しくなるということであれば、売却を検討したいところです。

しかし、そもそも田んぼの真ん中にあるような中古のアパートが簡単に売れるか?という問題があります。

仮に売れたところで、銀行への借り入れを完済できる金額で売却できるとは限りません。

さらにサブリースを契約したまま売却するには、サブリース業者の書面による承諾が必要な場合がほとんどです。

なので、相続して売却するには、相当な困難が予想されます。


サブリース契約を解除して、他の不動産業者に管理を委託する

サブリース契約の借上賃料減額のリスクについては上で述べたとおりですが、もう一つ、相続人にとって深刻な問題があります。

サブリースを続ける限り、大家さんに賃貸経営のノウハウが一切身につかないことです。

不動産賃貸を経営されている方は、私の知る限り、皆さん全力を尽くしています。

例えば、東京で会社員をしながら地方のアパートの大家さんもされている方は、休日のたびに車で2時間かけて、アパートの草むしりに行っています。

アパートを何棟も所有するベテランの大家さんだって、楽に大家業をこなしている方を私は知りません。

賃貸経営というのは、やれる限りのことを全てやって、なんとかかんとか利益が出る商売なんだと思います。

もし、本腰を入れて賃貸経営に取り組むというのであれば、サブリースを解除することになります。

とはいえ、いきなり解除して自分で賃貸経営というのはかなり難しいので、少なくとも最初のうちは不動産管理会社を入れたほうが良いと思います。

なかにはサブリース業者からの乗り換えを専門でやっている管理会社もあります。

管理会社を探す場合も、事業の経営者として、冷静に判断しながら物事を進めていく必要があります。

サブリースを解除をするには、「3ヶ月~6ヵ月前に書面でサブリース業者への通知をしなければならない」とされていることがほとんどです。

できれば信頼のできる管理会社に相談しながら話を進めていくべきです。


相続放棄も考える

もしも、サブリースの不動産をはじめ、他の遺産も調査した結果、相続するメリットがないのであれば、相続放棄を検討すべきです。

相続放棄をすると、サブリースの不動産はもちろん、自宅や預貯金などの遺産も相続できないことになります。

遺産を正確に調査したうえ、今後の相続人の状況も考慮に入れて冷静に判断する必要があります。

ただ、負担になる遺産を相続することで、今後の生活が壊れてしまう事態は避けなければなりません。



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