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相続の基礎知識QA

相続した不動産を売却するまでの流れや税金のことを教えてください。

相続した不動産を売却するまでの流れや税金など、注意点を全てご説明します。

相続財産に不動産があっても、相続人がすでに家を持っていたり遠方に住んでいる場合、どうしたらいいのか悩みますよね?

不動産は持っているだけで毎年固定資産税がかかるうえ、時間が経てば経つほど資産価値が減少していきます。

借りてくれる人がいるなら賃貸に出すのもいいですが、まずはシンプルに売却を検討するのが一般的。

とはいえ、不動産を誰にどうやって相続させたらいいか?、どうやって売却に出せばいいか?、どんな税金がかかるのか?など、いまいちよく分からないっていうのが本音ではないでしょうか?

ここでは、遺産に不動産があった場合の分け方から売却までの流れ、手続きにともなって発生する税金をまとめて解説します。

長文になりますので、個別の手続きについて手っ取り早く知りたい方は、下の目次をクリックしてください。


相続した不動産を売却する流れと注意点(目次)



遺産である不動産を売却する場合は、前提としてまず誰がその不動産を相続するのかを決めなければなりません。

が、ここで最初に注意しなければならないのは「相続税」

相続税がかかるのかかからないのか?かかるならどのぐらいかかるのか?を把握して遺産分けをしないと、思わぬ高額な税金がかかってしまうことがあります。

相続税ってすごく複雑で、こんなふうに分ければ相続税が大幅に減額されるとか非課税になるとか、ややこしい特則がたくさん。

ですので、遺産分けの話し合いをするときは、できるだけ相続税がかからないような方法から検討していくのが大事というわけですね。


相続税がかかるかどうかの判断基準

相続税は、相続で受け取った遺産の額が大きい場合にかかる税金です。

「遺産がこの金額以下なら、相続税はかかりませんよ」という基準額(基礎控除額)が定められています。

不動産も含めた遺産の額が基礎控除額を超えるのであれば相続税が発生する、反対に言えば基礎控除額を下回るなら相続税はかからない、というわけですね。

基礎控除額は法定相続人の数によって異なるので、相続税が発生するかどうかを判断するにはまず「法定相続人が何人いるのか?」と「遺産全体の内容」を正確に把握しなければなりません。

そのためは、下の3つの作業が必要になります。
遺産総額が基礎控除額を超えて、相続税が発生しそうな場合
調査の結果、遺産の額が基礎控除額を超えて相続税が発生することが判明した場合は、特例などを使って相続税を減額もしくは非課税にできないか検討することになります。

特例を使うには複雑な要件を満たさなければなりませんので、この要件を満たす方法で遺産を分けられないかを検討するわけですね。

同時に「この分け方をしたらこの相続人にはこのぐらい相続税がかかる」といった具合に、遺産の分け方に応じた相続税のシュミレーションもしておきましょう。

遺産の評価や減額のための特例の検討、課税のシュミレーションをするには専門知識が必須。
相続税が課税される可能性がある場合は、プロである税理士の力を借りましょう。


売却前提で不動産を分ける場合、分け方は2種類ある

相続不動産を売却する前提で分ける場合、次の2種類の分け方があります。

(1)まず売却してしまって、その売却代金を分ける「換価分割」
(2)相続人のうちの誰かが取得して、対価として他の相続人にお金を払う「代償分割」
不動産の分け方の種類やメリット・デメリットの詳細を説明している記事もありますので、こちらも参考にしてください。


(1)売却して代金を分ける「換価分割」
相続する不動産の売却を前提として遺産分割協議をする場合は、売却代金を各相続人で分配する「換価分割」という分け方が一般的です。

相続した不動産を売却・現金化してから分けることになるので、とても分かりやすいのがメリット。ですが、注意点もあります。

換価分割の注意点
売却代金を相続人で分ける換価分割をする場合、最も注意しなければならないのが、「譲渡所得税」の課税です。

「譲渡所得税」は、相続した不動産を売却することで利益(譲渡所得)が発生する場合にかかる税金。相続税とは別物です。

譲渡所得税の詳細はあとで解説しますが、税率が高いんです。

なんと税率が利益(譲渡所得)の約20~39%!
実に利益の2割~4割が税金で持っていかれます。

そしてこの換価分割によって不動産を分けると、状況によってはある相続人は譲渡所得税が課税されないのに、別の相続人には高額な課税をされる場合があるんです。

【わかりやすい例】
相続財産   :自宅の土地建物(時価4,000万円/取得費2,000万円)
被相続人   :父
相続人(二人):長男(相続不動産に被相続人と同居)
        次男(別に自宅を所有)

  1. かつて父親が2,000万円で取得した自宅の土地建物を売却して、売却代金を長男と次男で分ける内容の遺産分割協議をした。
  2. 売却した結果、4,000万円で売れた
  3. 売却代金は、長男と次男で2,000万円ずつ分けあった

この場合、「売却代金4,000万円-取得費2,000万円」で、売却による利益(譲渡所得)は、二人合わせて2,000万円となります。

一人当たりの利益(譲渡所得)は、長男と次男それぞれ「1,000万円」

ここで問題になってくるのが、相続した不動産の売却により、長男と次男にはそれぞれいくらの譲渡所得税が課税されるのか?ということです。

長男はもともと亡き父と同居していたため、マイホーム控除の特例により3,000万円までの利益は課税されません。

結果、長男に譲渡所得税はかからず、手にした売却代金2,000万円はまるまる手元に残ります。

一方で、次男はマイホーム控除の特例が使えないので、利益1,000万円に対して、約200万円から400万円の譲渡所得税が課税されます

結果は以下のとおり。
【結果】
長男:手にした売却代金2,000万円がまるまる手元に残った
次男:手にした売却代金は2,000万円だが、約200万円~400万円を税金で持っていかれた
このように、一見するとわかりやすくて公平に見える換価分割は、相続人の状況によっては高額な譲渡所得税の課税で差が出てしまうことがあるんですね。


(2)相続人のうちの誰かが取得して、対価として他の相続人にお金を払う「代償分割」
「長男が不動産を相続して、対価として次男に売却代金の半分を支払う」とする「代償分割」をした場合はどうなるでしょうか?

先のケースを例にすると、相続した不動産の売却代金4,000万円のうち、2,000万円を次男に支払うことになります。

  1. 亡き父親が2,000万円で取得した自宅の土地建物を、長男に相続させて、売却代金の半分を次男に支払う内容の遺産分割協議をした。
  2. 長男名義に相続登記して売却した結果、4,000万円で売れた
  3. 長男は、売却代金のうち2,000万円を、代償金として次男に支払った

この場合も、売却による利益(譲渡所得)は、「売却代金4,000万円-取得費2,000万円」で、2,000万円となります。

また、長男はマイホーム控除の特例により、3,000万円までの利益は課税されません。

結果、換価分割の場合と同様に、長男に譲渡所得税はかかりません。

一方の次男ですが、こちらは法律上も実質上も不動産を取得していないので、換価分割の場合と異なり、譲渡所得税が課税されることはありません。

長男から支払われた2,000万円が贈与とみなされないように注意する必要はありますが、遺産分割協議書に「代償として支払う」旨を明記することで課税は避けられます。

【結果】
長男:次男に支払った分を引いた売却代金2,000万円がまるまる手元に残った
次男:代償金として受け取った2,000万円がまるまる手元に残った
換価分割した場合と比べると、売却代金を長男と次男で半分ずつ分けることに違いはありませんが、譲渡所得税の観点からみると大きな差が出ることになりますね。

インターネットなどで調べると、「相続した不動産を売却するなら換価分割という方法で遺産分けすると良い」という内容の記事が多く見つかります。

確かに換価分割はとても明快でわかりやすいのですが、相続人の状況によっては代償分割のほうが良い場合もあります。

一番大切なことは、あくまで遺産や相続人の状況に応じて、より適した不動産の分割方法を考えるということに尽きますね。



相続した不動産を売却するには、前提として不動産の名義を亡くなった方(被相続人)から相続人に変更しなければなりません。 この手続きを「相続登記」といいます。
亡くなった方の名義のまま不動産を売却することはできないんですね。

不動産の名義は、遺産分割協議に従って変更することになります。

特定の相続人に取得させるにしろ相続人同士で共有するにしろ、誰が不動産を取得するか決まったら、まずは相続登記から。

相続登記の申請先は、不動産のある地域を管轄する法務局です。

相続登記の必要書類

相続登記には、以下の書類が必要です。

  1. 亡くなった方の出生から死亡までの全ての戸籍
  2. 亡くなった方の死亡の記載のある住民票または戸籍附票
  3. 相続人全員の現在の戸籍
  4. 遺産分割協議書(各相続人が実印で押印)
  5. 相続人全員の印鑑証明書
  6. 不動産を取得する相続人の住民票
  7. 不動産の固定資産評価証明書
  8. (司法書士に登記を依頼する場合)登記委任状
司法書士に登記手続きを依頼する場合、上記のうち印鑑証明書以外は、司法書士が作成・取得することができます。
事案に応じて上記の他にも書類が必要になる場合もありますが、ここで気にする必要はありません。


相続登記にかかる登録免許税

相続登記をする場合、国に納める「登録免許税」がかかります。
【相続登記の登録免許税】
不動産の固定資産評価額×0.4%
不動産の固定資産評価額は、毎年6月ごろに役所から送られてくる固定資産税の納税通知書や、役所で取得できる固定資産評価証明書に記載されています。

固定資産税がかからない私道がある場合
固定資産税がかからない私道(公衆用道路)は、固定資産評価証明書が存在しない場合がほとんど。

どうやって登録免許税を算出するかというと、基準になる近隣の宅地の1平方メートルあたりの評価額に30/100をかけて算出した額を、私道の1平方メートルあたりの評価額とみなして計算します。

分かりづらいですね。
実際に計算してみるとそんなに難しくないと思うので、例を載せておきます。
【私道の登録免許税算出の例】
近隣の宅地の評価額:1,000万円(100平方メートル)
私道の面積:10平方メートル

  1. 近隣宅地の1平方メートルあたりの評価額を算出する
    1,000万円÷100平方メートル=10万円
  2. 私道の1平方メートル当たりの評価額を算出する
    10万円×30/100=3万円
  3. 私道の評価額を算出する
    3万円×10平方メートル=30万円
  4. 私道の登録免許税を算出する
    30万円×0.4%=1,200円
「近隣の宅地」(専門用語で「近傍宅地」といいます。)をどこの宅地にすべきかについては、法務局によって取り扱いが異なります。

ですので、私道がある場合、事前に法務局で「私道の免許税の算出にはどの宅地の評価額を使うべきか」を確認して、指定された宅地の評価証明書を取得してからでないと、相続登記の登録免許税を算出できないんですね。

手間がかかりますが、仕方がありません。

司法書士も、もっぱら登記申請をしている法務局についてはどのような取り扱いになっているのか把握している場合もありますが、それでも基本的には事前に法務局に確認しています。
相続登記にかかる税金を算出するのも、楽ではありません。


司法書士報酬

司法書士に相続登記を依頼する場合は、登録免許税とは別に司法書士への報酬がかかります。

報酬の目安については一概には言えませんが、例えば書類の収集や作成から登記まですべて依頼するのか、それとも法務局への登記申請だけを依頼するのかなど、依頼する内容によって様々です。

あまり参考にならないかもしれませんが、司法書士報酬の目安についてできる限りの説明をした専門家に依頼した場合、費用はどのぐらいかかるの?という記事もあるのでよろしければ。

相続登記で司法書士に支払う費用が「高い」と感じる場合もあるかもしれませんが、実はその費用の大半は報酬ではなく登録免許税だったりします。


相続登記が終わった後は?

相続登記が完了すれば、登記簿に新たに相続人の住所や名前が記載されます。

これではじめて、その不動産が「自分のものです」ということを他人に対して主張できるようになるんですね。

相続登記を完了すれば、いよいよ不動産を売却するための準備完了といったところです。


相続登記によって交付される書類
登記識別情報通知
相続登記が完了するとさまざまな書類が法務局から交付・返却されますが、なかでも一番重要な書類が「登記識別情報通知」
これ、従来の「権利証」にあたる書類なんです。

今後不動産を売却する際に必ず必要になりますので、大切に保管しましょう。

紛失してしまうと、売却の際に司法書士によるものすごく厳格な本人確認が必要になり、手間も費用もかさむことになってしまいます。

【登記識別情報通知の注意点】
登記識別情報通知には、登記識別情報という一種のパスワードのようなものが記載されています。

目隠しシールがされていたり、折り込まれてとじられていたり、登記識別情報そのものは確認できないようになっています。

この情報は、所有者以外の他人に知られてはいけないのはもちろん、所有者本人も知らなくて良い情報。

もし他人に知られてしまうと、不動産を勝手に他人名義にされてしまう危険も出てきます。

登記識別情報通知は、決してシールやのりをはがさずに、不動産を売却するまでそのままの状態で大切に保管しましょう。

この書類は、実際に不動産を売却する際に、取引に立ち会う司法書士が預かって、登記申請に使用します。


その他の重要書類
下記の書類は、その他の遺産の名義変更や税務申告で使用します。
登記完了後に原本を返してもらえるよう、コピーをつけるなど、事前に処理してから登記申請しましょう。
  1. 遺産分割協議書と印鑑証明書
    コピーの一番上に「原本還付」、一番下に「上記は原本に相違ありません。」と記載のうえ、記名押印します。

  2. 固定資産評価証明書、住民票
    遺産分割協議書と同じ処理をします。

  3. 戸籍
    「相続関係説明図」を作成して提出すると、原本を全て返してもらえます。
    また、登記申請とあわせて「法定相続情報」を取得しておくと、預貯金など、不動産以外の相続手続きに使えるので便利です。


相続した不動産を売却することで利益(譲渡所得)が発生する場合は、相続税とは別に譲渡所得税がかかります。

上のほうでも書いていますが、譲渡所得税は高いです!

税率は亡くなった方が不動産を取得した日からの所有期間の長さによりますが、利益(譲渡所得)の約20~39%。強烈ですね!
【譲渡所得税の税率】
  • 亡くなった方が取得した日からの所有期間がおおむね5年を超える場合
    ⇒利益(譲渡所得)の20.315%
  •  
  • 亡くなった方が取得した日からの所有期間がおおむね5年以下の場合
    ⇒利益(譲渡所得)の39.63%

  • ※所有期間は、売却した年の1月1日時点で5年を超えるかどうかにより判断されます。
    売却で出た利益がある場合は、実にその2割から4割が税金で持っていかれることに。
    これを忘れて売却代金を使ってしまったりすると、大変なことになりますね!

    ですので、細かくてややこしいのは我慢して、基本的なところは押さえておきましょう。


    利益(譲渡所得)はどうやって算出されるか?
    利益(譲渡所得)は、以下の計算式で算出されます。
    利益(譲渡所得)=売却価格-{(a)取得費(b)譲渡費用

    (a)取得費とは?
    取得費とは、亡くなった方がその不動産を取得した時の「購入代金」や「仲介手数料」、「不動産取得税」など。

    当時の売買契約書や領収書があれば、その時かかった費用を取得費として差し引くことができるというわけですね。

    ただ残念ながら、現実としては当時の資料が残っているということはほとんどありません。

    購入当時の契約書や領収書が残っていない場合は、売却価格の5%を取得費として差し引くことが認められています。

    例えば、相続した不動産が3000万円で売れた場合は、その5%の150万円を取得費として差し引くことができるんですね。

    ただし、この5%という数字は、本来かかったであろう購入代金などを考えると非常に低い数値。

    相続した不動産を売却する場合は、可能な限り被相続人がその不動産を取得したときの売買契約書や領収書を探しましょう。

    購入当時の売買契約書や領収書があるかないかで、売却の際にかかる譲渡所得税が何百万円も変わることがあります。


    (b)譲渡費用とは?
    譲渡費用とは、不動産を売却した際にかかった費用です。

    代表的なものは、売却の際に不動産業者に支払った仲介手数料や、建物を取り壊して更地にして売った場合の解体費用。

    譲渡費用も、利益(譲渡所得)を算出する際に取得費とあわせて売却代金から差し引くことができます。

    売却する際の領収書や契約書などは、後で譲渡所得税を申告する際に有利な資料になりますので、一式きっちり保管しておきましょう。


    譲渡所得税の控除特例
    相続した不動産を売却した場合の譲渡所得税の控除特例には、以下のものがあります。

    1. マイホームを売却した場合の3,000万円控除
    2. 10年以上所有していたマイホームを売却した場合の特例
    3. 相続税を支払った場合の特例

    1. マイホームを売却した場合の3,000万円控除
    自分が住んでいたマイホームを売却した場合、所有期間に関わらず、利益(譲渡所得)から3,000万円を差し引くことができます。

    つまり、マイホームを売却した場合は、利益が3,000万円までは譲渡所得税がかからないのです。

    この控除は、所有期間に関わりなく適用できるのが特徴。

    この特例を相続に当てはめると、下記の場合には、相続不動産を売却した際、利益3,000万円までは譲渡所得税がかからないことになります。
    ※下記以外にも、控除の要件として「売却の相手方が一定の親族でないこと」等があります。

    (1)遺産である不動産(自宅)に、亡くなった方と同居していた相続人がいる
    (2)その相続人が自宅を相続して売却する
    この控除制度を考慮せずに遺産分けの話し合い(遺産分割協議)をまとめてしまうと、使おうと思えば使えたはずの制度を見落として、避けることができた税金を支払うハメに。

    ですので、相続不動産の売却を検討する際には、最低限の税金のことはおさえたうえで事を進めるのが大切ですね。


    2. 10年以上所有していたマイホームを売却した場合の特例
    10年以上所有していたマイホームを売却した場合は、譲渡所得税を14%~に抑えることができます。

    これは、上記の「マイホームを売却した場合の3,000万円控除」とあわせて利用することも可能。

    例えば、10年以上所有する自宅で、亡くなった方(被相続人)と同居していた相続人がいる場合、その相続人が自宅を相続して売却すれば、利益(譲渡所得)が3,000万円までは譲渡所得税はかからず、3,000万円を超える利益が出たとしても、譲渡所得税は14%~で済むことになります。


    3. 相続税を支払った場合の特例
    相続税を支払った場合、相続税の申告期限(亡くなった日から10か月)の翌日から3年以内に相続した不動産を売却したのであれば、納めた相続税のうちの一定金額を「取得費」として加算することができます。



    不動産を売りに出す場合、不動産業者に仲介を依頼します。
    仲介を依頼することで、その不動産の情報が市場に出回ることになりますので、買い手が見つかりやすくなるというわけですね。

    仲介手数料

    仲介を依頼した不動産業者を介して売却できた場合は、仲介手数料が発生します。
    (売却に成功しない限り、仲介手数料は発生しません。)

    仲介手数料は、以下の計算式で算出できます。

    【仲介手数料の計算式】
    売買価格×3%+6万円+消費税

    【2,000万円で売れた場合の例】
    2,000万円×3%+6万円+消費税(8%)=712,800円


    仲介契約の種類

    仲介契約には、次の3種類があります。
    売主にとっては、それぞれメリット・デメリットが。

    1. 専属専任媒介契約
      依頼した不動産業者1社だけが売却の仲介をすることができます。
      その不動産業者以外に売却の仲介を依頼することができないのはもちろん、売主がその不動産業者をとおさずに自力で買主を見つけることもできません。

    2. 専任媒介契約
      契約した不動産業者以外の不動産業者に売却の仲介を依頼することはできませんが、売主が自力で買主を見つけることは可能です。

    3. 一般媒介契約
      依頼した不動産業者以外にも売却の仲介を依頼できるうえ、売主が自力で買主を見つけることもできます。
    不動産業者にとっては、専属専任媒介契約をしてもらえれば自社のみが売却の仲介をすることになるので、仲介手数料をもらえる可能性が最も高いことになります。

    そのため、不動産業者としては、専属専任媒介契約の場合に最も力を入れて仲介業務にあたることができます。

    ですので、信頼できる不動産業者に仲介を依頼する場合は専属専任媒介契約が一番ですね。


    仲介契約の注意点

    高額査定に注意
    中には、専属専任媒介契約をしてもらうために、実際よりも高い査定価格を売主に提示する不動産業者もあります。

    できれば複数の不動産業者に査定を依頼して、相場がどのぐらいなのか、感じをつかんでおきましょう。 売主自らが足を使うのは大事なことです。

    他よりも査定価格が数百万円も多い見積もりを出してくる不動産業者は、注意が必要ですね。


    両手仲介の場合
    売主の仲介を依頼された不動産業者は、買主を自社で探してくることで、買主からも仲介手数料を受け取ることができます。

    不動産業界では、「両手仲介」なんて呼ばれてます。

    場合によっては、売主と買主両方から仲介手数料を得るために、売買代金を下げてでも売買契約を成立させようとするケースもあるので要注意。

    本来であれば、売主から仲介を依頼された不動産業者は、売主の利益のために少しでも高い価格で売れるように力を尽くさなければなりません。

    が、買主からも仲介手数料を得るために、買主にとって買いやすい価格になるよう値段を下げて(売主の利益を犠牲にして)売買させようとする悪質なケースがあるのです。


    購入希望者が次々に現れるケース
    何度も購入希望者が現れては消える場合も注意が必要。
    他の物件を売るための、「ダシ」に使われているケースです。

    例えば、同じ不動産業者が売却の仲介をする2つの物件があったとします。

    1. 【物件A】
      市場価値2,000万円/売却希望価格3,000万円
    2.  
    3. 【物件B】
      市場価値2,000万円/売却希望価格2,500万円
    不動産業者は、購入希望者に最初に「物件A」を紹介。
    購入希望者としては「高いな」という印象を受け、もちろん購入には至りません。

    次にその購入希望者に「物件B」を紹介します。
    購入希望者としては、「この物件のほうがお買い得だな」という印象を受けやすくなり、売買が成立しやすくなるという手法です。

    「物件B」の売主にとってはいい話ですが、ダシに使われる「物件A」の売主にとっては、たまったものではありませんよね。

    同じ手法を、不動産業者が抱える「物件C」や「物件D」で繰り返していって、最後は、売れ残った「物件A」の売主に「これだけ購入希望者がいるのに売れないので、価格を下げましょう」と持ち掛けることになります。



    買主が現れれば、いよいよ売買契約を結ぶことになります。

    売買契約の際には仲介業者から様々な説明があるので、不明な点や気になる点がある場合は、すべて質問しておきましょう。

    売買契約は、不動産仲介業者をとおして、売主・買主別々に行われることが多いです。

    買主からは、売買代金の1割~2割の「手付金」が支払われるのが一般的ですね。


    印紙税

    印紙税とは、売買契約書などを作成した際に課税される税金のこと。
    不動産の売買契約書に収入印紙を貼ることで、納税したことになります。

    印紙税は契約書に記載された売買価格に応じて金額が異なりますが、売買価格が1億円以下であれば、高くても3万円です。

    関係書類はすべて保管しましょう

    売買契約の際には、売買契約書をはじめ、さまざまな書類を渡されます。
    中には税務申告で使用する書類もあるので、一式大切に保管しましょう。



    売買契約が済んだ後は、関係者が一堂に会して取引を清算する「決済」が行われます。

    決済とは?

    決済とは、不動産の取引に関するすべての資金のやり取りや所有権の移転を完結させる手続きです。

    売主・買主はもちろん、不動産仲介業者や買主に融資をする銀行、取引に立ち会う司法書士など、関係者すべてが集まって手続きをします。

    不動産業者の方は「残代金決済」(手付金を引いた残りの売買代金を清算するという意味)と呼ぶことが多いですが、銀行の関係者の間では「(融資)実行」という呼び方が浸透しています。

    司法書士は「(取引の)立会」という呼び方をすることも。
    私は司法書士なので、同職同士で話すときは「立会」と言うこともありますが、個人的には売主・買主にとって一番わかりやすい(気がする)「決済」という呼び方をしています。


    全ての資金を清算する

    決済で清算すべき資金は、以下のとおり。

    1. 売買代金
      買主から手付金が支払われている場合は、残りの売買代金を清算します。

    2. 固定資産税・都市計画税
      固定資産税や都市計画税は、その年の「1月1日」時点の所有者に課税されます。
      売主が決済前日までの税金を負担し、買主が決済当日からの税金を負担するように、日割りで清算するのが一般的ですね。

    3. 仲介手数料
      売主・買主がそれぞれの不動産仲介業者に仲介手数料を支払います。

    4. 登録免許税
      売主から買主に不動産の名義を変更する登記や、買主が融資を受けて不動産を担保に入れる際の登記にかかる税金です。
      所有権を得る買主が負担するのが一般的です。
      相続登記から売却までの間に、売主の住所や氏名に変更があった場合は、その登記にかかる税金は売主が負担します。

    5. 司法書士報酬
      取引に立ち会う司法書士への報酬も清算します。
      買主が負担することが一般的ですが、売主の住所や氏名に変更がある場合は、その分は売主が負担します。


    資金の流れ

    買主が銀行から融資を受ける場合、資金は下の図のように流れます。
    銀行 →(融資)→ 売主 →(売買代金)→ 買主

    一方で不動産の所有権は、売主と買主の「売ります。買います。」の合意のみで移転するのが民法の大原則。

    しかしこれでは、売買代金が支払われないのに所有権だけ買主に移転してしまうことになるので、取引の安全上大問題ですよね。

    そこで実務では、取引の安全確保のために、売買契約書の中で「所有権は、売主が売買代金の支払いを受けたときにはじめて買主に移転する」という特約をつけています。

    売主にとっては、売買代金を受け取らない限り所有権を失うことはないので安心ですね。


    司法書士の役割

    司法書士は、取引の当事者の本人確認や、売買の対象となる不動産を確認して、法律上売買契約がきちんと成立しているかどうかを確かめます。

    司法書士がこれらを確認して登記ができると判断すれば、実際に資金移動が開始です。

    資金移動と法律上の権利の移転が行われたことをきっちり確認できたら、決済は終了。

    司法書士には、取引の安全を確認するという重要な役割があるんですね。

    1. 売主にとっての司法書士
      司法書士は、売主が売買代金を受け取っていないのに不動産の所有権が買主に移ってしまうことを防ぐ役割を果たします。

    2. 買主にとっての司法書士
      買主にとっては、売買代金を支払ったにもかかわらず、不動産の名義を自分に変更してもらえないという事態を防ぐ役割を果たします。


    決済が終了したら司法書士が登記申請

    決済が終わったら、司法書士はその日のうちに売主から買主に名義を変更する登記申請をします。

    申請から2週間ぐらいで登記は完了。売主・買主それぞれに、司法書士から登記関係書類が返却されます。



    売却の決済が済んだら、遺産分割協議の内容に従って、相続人同士で売却代金を分配します。

    最後の最後でトラブルにならないように、遺産分割協議をしっかりまとめておくことが一番重要ですね。

    譲渡所得税の負担で相続人の間に不公平が生じる場合は遺産分割協議のなかで調整したり、場合によっては、売却代金を分ける際の振込手数料の負担なども遺産分割協議の中で明確にしておくことも必要です。



    相続した不動産を売却したときは、「相続税の申告・納税」と「確定申告による所得税と住民税の納税」が必要になる場合があります。
    「相続税は申告」、「譲渡所得税は確定申告」と覚えておくとわかりやすいですね。

    相続税の申告・納税

    不動産を含む遺産が基礎控除額を超えて相続税が発生する場合は、相続が発生したことを知った翌日から10か月以内に、相続税の申告と納税をする必要があります。

    また、各種特例を利用すれば相続税を支払う必要がない場合でも、相続税の申告はする必要があります。


    譲渡所得税の確定申告・納税

    相続した不動産を売却することで利益(譲渡所得)が発生する場合は、売却した翌年の2月16日から3月15日までに、確定申告をしなければなりません。
    売却による利益が出ない場合は、確定申告は不要です。

    譲渡所得税は、「所得税」と「住民税」に分かれます。

    「所得税」は、確定申告の期限である3月15日までに、申告とあわせて納税。
    一方で「住民税」は、確定申告した次の5月ごろに納付書が送られてくるので、送付された納付書で納税します。

    1. 所得税の納税
      売却の翌年の2月16日から3月15日までに、確定申告とあわせて納税する

    2. 住民税
      確定申告した次の5月ごろに送られてくる納付書で納税する

    以上、かなり細かくなってしまいましたが、相続した不動産を売却するための手順と注意点をご説明しました。
    相続した不動産を売却するための手順や注意点、税金関係については網羅できているはずです。

    相続や不動産売却でモヤモヤした不安を持っていた方が、少しでも安心してくれたらうれしいです。


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