遺産に関する手続きでトラブルを回避するには、「遺言書」を作っておくのが一番です。 遺言書を作っておけば、法律上適正に作成されている限り、原則としてその遺言に従って遺産が分配されます。
また、遺産となる財産を目録として残しておけるので、残されたご家族にとっては、亡くなってからの遺産の調査のわずらわしさが大いに軽減されます。
遺言書を作るのはちょっと敷居が高いという場合でも、ご自身の財産や契約(携帯電話やクレジットカードなど)をメモに書き出しておいたり、関係しそうな書類を一か所にまとめてそっと引き出しにしまっておくだけでも、ご家族の負担を大いに和らげることができるのでお勧めです。
お葬式や役所関係の手続きも含む、亡くなった後の流れ
もう一つ気になるのは、実際に亡くなった後に、残されたご家族がどんな手続きをしなければならないか?ということだと思います。亡くなった後、ご家族や身内の方は、お葬式や納骨、年金等役所関係の手続きや遺産の分配など、様々な手続きに忙殺されます。
一般的な流れと、負担軽減のためのポイントやご家族が注意すべき点について説明するので、よろしければご参考になさってください。
亡くなった後の流れ
- 医師から「死亡診断書」をもらう
- 葬儀社に連絡
- 親戚・ご近所・ご友人に連絡
- 役所に死亡届を提出。あわせて「火葬許可証」をもらう
- お通夜・葬儀・お墓の手配
- 役所関係の手続き(健康保険・年金・運転免許証等)
- 契約関係の手続き(公共料金・固定電話・携帯電話・クレジットカード等)
- 相続人・遺産の調査(不動産・預貯金・株式・自動車・借り入れ・生命保険等)
- 遺産分けの話し合い(遺言書があればそれに従う)
- 所得税申告(準確定申告)/4か月以内
- 遺産の分配
- 相続税の申告・納税/10か月以内
1. 医師から「死亡診断書」をもらう
身内が亡くなった場合、まず医師から「死亡診断書」をもらいます。のちの手続きで複数回必要になるので、必ずコピーを複数枚(10枚程度)とっておくようにします。
2. 葬儀社に連絡
葬儀社に連絡して、ご遺体を運んでもらいます。あわせて葬儀等の打ち合わせをすることが多いようですが、一から段取りを決めるとかなり大変なうえ、費用も高くなってしまう傾向もあるようです。 もしご家族の負担を減らしたいということであれば、ご自身で葬儀社と相談のうえ段取りを決めておくとよいでしょう。 なお、最近は火葬場に空きがないため、すぐに葬儀ができないことも多いようです。
3. 親戚・ご近所・ご友人に連絡
遠方から来る場合はもちろん、葬儀に参列するのはそれなりに多くの準備が必要なので、親戚等への連絡は早めにしておいたほうが良いです。4. 役所に死亡届を提出。あわせて「火葬許可証」をもらう
死亡診断書を役所に持っていき、死亡届を提出します。あわせて火葬に必要となる「火葬許可証」をもらいます。
5. お通夜・葬儀・お墓の手配
お通夜・葬儀は、葬儀社が主導してくれるのが一般的です。最近は、葬儀の日に初七日も済ませることも多いようです。
葬儀、火葬、納骨が済んで、いったん一段落となります。
なお、言うまでもありませんが、お墓の手配も生前に済ませておいたほうがご家族の負担は軽くなります。
6. 役所関係の手続き(健康保険・年金・運転免許証等)
- 国民健康保険・介護保険・後期高齢者医療保険・健康保険(会社員)
- 保険証を返却
- 国民健康保険や健康保険(会社員)に加入している方が亡くなった場合、「埋葬料」や「葬祭費」を受給できる場合があるので、保険証を返却するときに合わせて確認しましょう。
- 問い合わせ先:役所(国民健康保険・介護保険・後期高齢者医療保険)又は勤務先(会社員)
- 国民年金・厚生年金関係
- 年金手帳、年金証書を返却
- 遺族年金等を受給できる場合があるので、受給要件にあてはまるかどうか確認のうえ請求します。
- 問い合わせ先:役所(国民年金)又は年金事務所(厚生年金)
- 運転免許証・パスポートを返却
- 問い合わせ先:警察署又はパスポートセンター
7. 契約関係の手続き
- 公共料金・固定電話・携帯電話・NHK・インターネットプロバイダー・新聞・介護サービス・クレジットカード等
- 亡くなってから生前の契約関係をすべて洗い出すのは非常に難しいです。メモ程度で構わないので、生前に書き出しておくとご家族の負担が軽くなります。
- 問い合わせ先:各契約先企業
相続放棄を検討している相続人は、原則として解約や名義変更、料金の支払いはすべきではありません。相続放棄ができなくなる可能性があります。弁護士や司法書士に相談しましょう。
8. 相続人・遺産の調査(不動産・預貯金・株式・自動車・借り入れ・生命保険等)
遺産を受け継ぐことができる相続人は誰なのかを調査します。不動産や預貯金などのプラスの財産はもちろん、借り入れや誰かの保証人になっていないかどうかなど、マイナスの財産も調査します。
9. 遺産分けの話し合い
調査の結果明らかになったプラスとマイナスの財産を考慮して、誰が何をどのように受け継ぐのか話し合います。マイナスの財産のほうが明らかに大きい場合は、一切の遺産を相続しない「相続放棄」の手続きを検討します。遺言書がある場合は、原則としてその内容に従って遺産分けをすることになるので、もっとももめ事が起こりやすい「話し合いでのトラブル」を避けることができます。
10. 所得税申告(準確定申告)/4か月以内
亡くなった方の死亡日までの所得を確定申告します。期限は、原則として亡くなってから4か月以内です。
相続放棄を検討している相続人は、準確定申告の手続きに参加すべきではありません。相続放棄ができなくなる可能性があります。 家庭裁判所で相続放棄をした後に、税務署から申告するよう通知が届いたときは、相続放棄したことを伝えましょう。相続放棄をした人には、準確定申告の義務はありません。
11. 遺産の分配
遺言書もしくは、相続人同士の話し合いの結果に従って遺産を分配します。具体的には、不動産や預貯金の名義変更をします。
12. 相続税の申告・納税/10か月以内
全遺産を確定・分配し、相続税の申告と納税をします。基本的に相続税がかからない場合は、申告をする必要もありません。
相続税がかかるかどうかの判断基準については、こちらをご参照ください。