それは分かってるけど、「じゃあ、どうやって調べたらいいの?」ということになりますよね。
相続の対象となる遺産には、不動産や預貯金のようなプラスの財産のみならず、借金や未払いの税金などマイナスの財産も含まれます。
ですが、遺産は本当に人それぞれ。
生前に家族で話し合いをしたり生前対策をしていた場合など、相続人が遺産の存在を確実に把握しているならまだしも、「不動産や預貯金があることは分かっているけど、正確にはちょっと。。。。」という場合がほとんどですよね。
ここでは、あやふやな相続財産の内容をきっちり正確に把握するための調査方法を詳しく説明します。
かなり長文になるので、特定の財産の調べ方だけを把握したい方は、下の目次をクリックして該当の箇所へ飛んでください。
遺産の調査方法(目次)
1.相続財産調査の前提知識
調査は相続人のうちの一人からできる
遺産の調査は、貸金庫を除いて、相続人のうちの一人から単独でできるのが大原則。相続人全員の同意などは不要です。
銀行などの金融機関は、相続人全員の同意やら印鑑証明書やらが揃っていないと被相続人の預貯金の内容なんて教えてくれなそうなイメージですが、全くそんなことはありません。
複数の相続人がいる場合も全員の相続関係を証明する必要はなく、調査する人が相続人のうちの一人であることさえ証明できれば遺産の調査はできますので、必要書類をそろえる手間はさほどではありません。
調査に最低限必要になる書類
遺産の調査に必要になる書類は、以下のとおり。- 亡くなった方(被相続人)の死亡の記載のある戸籍謄本
- 調査する相続人と被相続人の関係がわかる戸籍謄本
- 調査する相続人の身分証明書(運転免許証や保険証など)
調査する人が被相続人の配偶者(夫や妻)、または子である場合は、その人の現在の戸籍謄本1通ですむ場合がほとんど。
ですが、調査する相続人が被相続人の両親や兄弟である場合は、被相続人の出生から死亡まで全ての戸籍も必要になります。
なぜかというと、両親や兄弟が相続人になるのは、被相続人に子がいない場合だけだから。
「両親または兄弟姉妹が相続人になる」=「被相続人に子供がいない」ということなんですね。
被相続人に子がいないことを証明するには、被相続人の出生(少なくとも子供を作れるようになる12歳ぐらい)から死亡までの戸籍をそろえて、その間に子供が生まれていないことを証明することになります。
「子供がいたけどすでに亡くなっている」という場合は、その死亡が証明できる戸籍も必要になります。
ですので、調査する相続人が被相続人の両親や兄弟である場合は、調査のための戸籍とはいえ、そろえるのも結構大変です。
それからあとで詳しく説明しますが、不動産の調査で取得する登記簿などは法務局で誰でも閲覧できるので、ややこしい書類は一切必要ありません。
法務局以外の「役所」や「銀行」などで遺産の調査をする場合に、上記の「1」~「3」の書類の提示を求められることになります。
判明した相続財産は「財産目録」にまとめる
調査の結果明らかになった相続財産は、「財産目録」にまとめます。財産目録は、遺産分けの話し合い(遺産分割協議)や相続税申告に利用する、非常に重要な書類です。
2.不動産の調査方法
実際に住んでいる自宅は別として、亡くなった方がどこにどんな不動産を持っていたかを正確に特定するのは、実はとても難しい作業です。まずは、不動産調査の基礎知識から。
不動産調査の基礎知識
(1)土地と建物は別物
日本の法律では、土地と建物はそれぞれ別々の不動産という取り扱いです。別々の財産だからこそ、例えば先祖代々の土地の上に自宅が建っている場合に、土地は祖父名義のままだけど、建物は父親の名義になっている、なんてことがよくあります。
ですので、不動産を調査する場合は、必ず土地と建物の両方を調べなければなりません。
(2)不動産は「地番」や「家屋番号」で特定する
土地や建物には、法務局(国)が割り振った「地番」や「家屋番号」というものがあります。「地番」や「家屋番号」は、1個の不動産ごとに割り振られていて、いってみればその土地や建物を識別するための名前のようなもの。
私達が普段の生活で意識することは一切ありませんが、不動産を特定するために欠かせない重要な情報です。
日常生活では「世田谷区三軒茶屋◎丁目◎番◎号」という「住所」を使っていますが、これは正確に言うと「住居表示」といって、地番や家屋番号とは全く異なるもの。
「住所(住居表示)」は、主に「その人がどこに住んでいるのか」など人の特定に使うためのもので、あくまでも人が主役です。
一方で「地番」や「家屋番号」は不動産を特定するためのもので、主役は不動産というわけですね。
「地番」と「住所(住居表示)」は、似ている場合や全く同じ場合もありますが、両者に関係性はありません。
自分の不動産を「地番」や「家屋番号」で把握している人なんて、全くと言っていいほどいないはず。
普通は住所で、例えば「世田谷区三軒茶屋◎丁目◎番◎号の土地建物」として認識している人がほとんどです。
が、これでは不動産を正確に把握することはできません。
相続財産である土地や建物を正確に特定するには、「地番」と「家屋番号」が必ず必要になるのです。
(3)ゴールは登記簿謄本(登記事項証明書)の取得
不動産の「地番」や「家屋番号」を特定できれば、法務局で登記簿謄本(登記事項証明書)を取得できます。登記簿には、不動産が現在誰のもので、どんな担保に入れられているのか、さらには過去に誰から誰の手に渡ってきたのかが記載されています。
いってみれば、過去から現在までの不動産の履歴書ですね。
不動産が誰のものか、誰の名義になっているのかを確認するには、登記簿が最も正確な方法。調査には絶対に欠かすことができません。
言ってみれば、これから説明する不動産の調査は、遺産に含まれるすべての土地建物の登記簿謄本(登記事項証明書)を取得するための作業ということになります。
【インターネットで登記情報を調査・確認する方法】
わざわざ法務局へ足を運ばなくても、パソコンから簡単に登記情報を調査・確認する方法もあります。
操作画面を画像付きで詳細に説明しているので、ご参考にして下さい。
わざわざ法務局へ足を運ばなくても、パソコンから簡単に登記情報を調査・確認する方法もあります。
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まずはざっくりと把握する
(1)納税通知書を確認する
納税通知書とは、毎年4月~6月初旬ごろに役所から送られてくる、固定資産税や都市計画税の通知書です。この通知書には、固定資産税が課税されている不動産であれば必ず記載されています。
まずは、課税されている土地の「地番」や建物の「家屋番号」を把握しましょう。
(2)権利証(登記識別情報通知)を確認する
納税通知書には、課税の対象になっている不動産しか記載されていません。課税されない「私道」や「墓地」を所有している場合は、納税通知書には記載されないのです。
納税通知書に記載されない不動産は、まず「権利証」(登記識別情報通知)で確認します。
「地番」や「家屋番号」が必ず載っています。
「権利証」は、不動産を買って名義変更の登記をしたときや、建物を新しく建てて登記した際に、法務局から発行される書類です。
仰々しい冊子になっていることが多く、表紙には「不動産登記済権利証」と題名がつけられていることがほとんどですね。
現在は、権利証に代わって「登記識別情報通知」という紙ぺらが発行されるようになっていますが、こちらは厚紙の表紙がつけられていることが多いです。
表紙には「不動産登記権利情報」や「登記識別情報」といった題名がつけられています。
権利証や登記識別情報通知は、自宅で保管される方がほとんどなので、机やタンスなどを探してみましょう。
故人が所有していた私道や墓地など非課税の不動産は納税通知書では確認できないので、権利証(登記識別情報通知)での確認が非常に重要です。
権利証(登記識別情報通知)が見つからない場合も大丈夫。下記の「名寄帳を取得する」をご参照ください。
役所で調査する(東京23区の場合は「都税事務所」)
役所でも非常に強力な調査ができます。が、その前に、役所で調査する場合の注意点を。
- 調査できるのは、その役所の管轄内にある不動産のみ
管轄外にある不動産は調査できません。不動産がある地域の役所での調査が必要です。
例えば、世田谷区と福島県会津若松市に不動産がある場合は、世田谷区の不動産については都税事務所で、会津若松市の不動産については会津若松市役所で調査する必要があります。 - 調査する相続人と亡くなった被相続人の相続関係を証明する「戸籍謄本」が必要
(1)名寄帳を取得する
名寄張とは、市区町村が管理する課税台帳です。納税する義務を負う人ごとに、その所有する土地・建物の一覧が記載されています。
何が便利かというと、名寄帳には、課税されている不動産はもちろん、納税通知書には載っていない非課税の不動産も記載されているんですね。
役所で名寄帳を取得すれば、固定資産税の課税対象になっている不動産のほか、非課税不動産である「私道」や「墓地」もあわせて一気に「地番」や「家屋番号」を把握できるというわけです。
自宅の土地建物のほかに私道や墓地を持っている可能性が少しでもある場合は、必ず名寄帳を取得しましょう。
名寄帳の注意点
- 「共有名義の名寄帳も出してください」と伝えましょう
私道は近隣の方との共有名義になっていることが一般的ですが、名寄帳は、一人で所有している不動産と、何人かで共有している不動産とで別々に管理されています。
そのため、役所によっては、何も言わないと一人で所有している分の名寄帳しか出してくれない場合があります。
これだと共有名義の私道が調査から漏れてしまうことに。
役所で名寄帳を取得するときは、必ず「共有名義の名寄帳も出してください」と窓口の担当者に伝えましょう。 - 名寄帳には記載漏れもあります
名寄帳には私道や墓地など、非課税の不動産も記載されているのが通常ですが、記載が漏れていることもあります。
非課税の不動産は、市区町村も正確に把握していない場合があるのです。
私道の記載漏れが疑われる場合は、法務局で「公図」という地図を取得してさらに調査します。
「公図」を使った調査方法については、下記「番外編」をご参照ください。
(2)固定資産評価証明書を取得する
固定資産評価証明書とは、固定資産税を課税する際の不動産ごとの評価額が記載された書類です。不動産の調査や特定に必須の書類ではありませんが、後々の名義変更(相続登記)の手続きの際には必ず必要になる書類なので、名寄帳を取得する際はついでに固定資産評価証明書も取得しておきましょう。
調査が終わってからの手続きがスムーズになります。
法務局で調査する
ここまでで、遺産の土地や建物の「地番」「家屋番号」が把握できたはず。あとはいよいよ法務局で登記簿謄本を取得してゴールになります。
まずは法務局での調査における注意点を。
- 一つの法務局で、日本全国の不動産の登記簿謄本を取得できる
役所での調査と異なり、法務局の管轄外の地域にある不動産でも謄本を取れるというわけですね。もちろん「地番」や「家屋番号」を把握しておくことが大前提です。 - 登記簿は誰でも取得できる書類なので、戸籍や身分証明書は一切不要
登記簿謄本(登記事項証明書)を取得する
登記簿には、所有者の名義やその他の権利関係など、不動産に関する全ての情報が記載されています。ここまでやってきた調査はすべて、不動産の登記簿をもれなく取得するための作業といっても過言ではありません。
登記簿謄本(登記事項証明書)の取得方法
登記簿は不動産が主体となっている情報なので、所有者の名前では調査することができません。ここでようやく、「地番」や「家屋番号」の出番というわけです。法務局では、不動産の所在地(世田谷区三軒茶屋◎丁目)に加えて、「地番」や「家屋番号」で不動産を特定して、登記簿(登記事項証明書)を取得します。
取得した登記簿謄本には、その不動産の面積や種類(地目)などの物理的な情報はもちろん、所有権がどういう経緯で誰から誰に移ってきたのかなど、権利に関する情報も記載されています。
登記簿に現在の所有者として亡くなった方(被相続人)が記載されていれば、その不動産が相続手続きの対象となる遺産であることが分かります。
また、「抵当権」や「根抵当権」などの登記がされている場合、その不動産が借り入れの担保に入れられていることになります。
抵当権など、所有権以外の登記は、登記簿の「権利部(乙区)」という部分に記載されているので、こちらも注意して確認する必要がありますね。
番外編
名寄帳の記載漏れが疑われる場合
役所で名寄帳を取得してみたけれど、載っているはずの私道や墓地が載っていない、という場合があります。 名寄帳の記載漏れが疑われる場合です。この場合は、さらに「公図」を使って調査します。
公図とは、法務局で取得できる公の地図のこと。
宅地はもちろん道路や墓地も記載されています。
この公図で、本当は遺産に含まれているであろう道路や墓地の「地番」を特定して、それをもとに登記簿謄本(登記事項証明書)を取得します。
登記簿に現在の所有者または共有者として故人の名前が載っていれば、その道路や墓地も遺産に含まれることが確定というわけですね。
公図を使った調査は、一般の方がやるにはかなり難しいです。
無理をせず司法書士に相談しましょう。
登記されていない建物がある場合
実際に建物はあるのに、登記されていない場合があります。本来であれば建物を建てたときに、少なくとも物理的な現況を示す「表題登記」という手続きをする必要がありますが、まれにこの表題登記をせずに、そのまま放置されてしまう場合があるのです。
こういった建物を「未登記建物」といいます。
未登記建物は、その名のとおり登記簿そのものが存在しません。
「登記簿がないのにどうやってその建物を調査したらいいの?」と思いますよね?
建物が登記されていなくても固定資産税はしっかり課税されます。
ということは、納税通知書や名寄帳には、未登記建物のこともしっかり記載されているのです。
登記簿ほど強力ではありませんが、納税通知書や名寄帳に記載されている情報だって建物に関する立派な情報です。
未登記建物の場合は登記簿がありませんので、納税通知書や名寄帳が調査のゴールとなります。
実際に財産目録や遺産分割協議書などに載せるときは、納税通知書や名寄帳に書いてある「棟番」や「構造」などで正確に特定しましょう。
詳しくは遺産に未登記建物があった場合どうしたらよいかをご覧ください。
3.預貯金の調査方法
亡くなった方の通帳やキャッシュカードが見つかった場合でも、調べてみるとそれ以外にも預貯金の口座を持っていた、ということはよくあります。故人が金融機関に持っていた預貯金を正確に把握するには、どうしたらいいでしょうか?
まずは、前提となる基礎知識から確認しましょう。
預貯金調査の基礎知識
(1)口座が凍結される
良く知られている話ですが、預貯金の調査を開始して金融機関に口座名義人が死亡したことが伝わると、亡くなった方がその金融機関に持っていた口座はすべて凍結されます。口座が凍結されると、預金の引き出しはもちろん、光熱費等の口座振替もできなくなります。
「凍結」なんて聞くとなんだか恐ろしいようなイメージですが、亡くなった人の口座からお金を動かせなくなるって、実は当たり前のこと。
慌てずに正確な調査をして、相続手続きを完了させることが大切です。
また、故人が口座を持っていた銀行で貸金庫も利用していた場合、口座と合わせて貸金庫も凍結されてしまいます。
貸金庫が凍結されてしまうと、中に入っている遺言書などの重要な書類が確認できなくなり、手続き全体に悪影響を及ぼします。
故人が貸金庫を契約していた可能性がある場合は、預貯金口座の調査は後回しにして、まず貸金庫から調査すべきです。
(2)全ての銀行の口座を一括して調査する手段はない
預貯金の調査は、金融機関ごとに行います。全ての銀行の預貯金を一括して調査することはできません。
そのため、まず預貯金を持っている可能性がある銀行を特定して、その銀行を一つ一つ個別に調査していくことになります。
(3)調査には少なくとも2週間はかかる
預貯金の調査は、2週間から長ければ1か月はかかります。支店の窓口に行って、すぐに完了するわけではありません。
まずは、ざっくりと把握する
亡くなった方(被相続人)の口座の手がかりになりそうなものを、片っ端から探します。手がかりになりそうなものを隅から隅まで探すことが重要です。
銀行(金融機関)でやること
口座がありそうな銀行のあたりをつけたら、次にその銀行の窓口へ出向きます。(郵送での調査を受け付けている金融機関もありますが、やるべきことは一緒です。)
【注意点】
- 口座の調査は、相続人の一人からできる。(相続人全員でやる必要はない)
- 口座を開設した支店だけでなく、どの支店でも受け付けてくれることが多い。
- その場で相続関係を証明する書類の提示を求められる場合がある。
事前に戸籍を用意しておきましょう。提示した戸籍は、コピーをとった後に返してくれます。 - 通帳やキャッシュカードがなくても調査できる。
- 口座名義人の死亡が伝わることで、その金融機関の口座はすべて凍結される。
口座の「名寄せ」をしてもらう
名寄せとは、その銀行で開設している全ての口座を洗い出すことです。まずは、この名寄せでその銀行の全支店に持っている全ての口座を把握します。
【「名寄せ」の特徴】
- 全ての支店にある口座を調べることができます。
- 普通預金や定期預金はもちろん、銀行を窓口とした投資信託などの取引がある場合も、口座がある限りすべて出てきます。
残高証明書を発行してもらう
名寄せで口座の把握ができたら、すべての口座の残高証明書を発行してもらいましょう。窓口で、残高証明書の発行依頼書を渡してくれます。
【残高証明書の注意点】
- 残高証明書の日付は、口座名義人が「亡くなった日」にしてもらいましょう。
- のちに遺産の内容をまとめた「財産目録」に、残高証明書に記載の金額を記入することになります。
- 残高証明書は、相続税の申告でも使用する重要な書類です。
取引履歴を発行してもらう
預金口座の取引内容を調べたい場合は、取引履歴を発行してもらいます。取引履歴は、期間を指定して発行することができますので、調べたい内容に応じた期間を指定して発行してもらいましょう。
- 死亡の前後に誰かに預金を引き出されていないかを確認したい場合
→死亡日前後の期間を指定する。 - のちに相続税を申告しなければならない可能性がある場合
→亡くなる前の3年間を指定する。
亡くなる前3年以内の贈与は、相続税の課税対象になるからです。
利息計算書を発行してもらう
のちに相続税の申告をしなければならない可能性がある場合は、残高証明書とあわせて「利息計算書」も発行してもらいましょう。相続税申告の際に、預貯金の価額を評価するのに必要になります。
できれば、後の相続手続きで必要になる書類ももらっておく
残高証明書などの発行依頼書などをもらうときは、あわせて後の相続手続きで必要になる相続手続依頼書等の書類ももらっておきましょう。金融機関によっては、相続人全員による遺産分けの話し合い(遺産分割協議)が終わっていないと渡してくれない場合もあります。
その場合はしかたがありませんので、調査が終わって手続きが進んだときに、再度必要書類をもらいに行きましょう。
インターネットバンクの取引の調査
インターネットバンクの場合、そもそも通帳が発行されていない場合がほとんど。預貯金を調査する際に漏らしやすいので注意が必要です。
調査するにあたっては、インターネットバンクに関する郵送物はもちろん、できる限り電子メールなどもチェックしましょう。
インターネットバンクの銀行名が分かったら、カスタマーセンター等に電話して、相続の手続方法を確認しましょう。
手続書類を郵送してくれます。
やるべき手続きの内容に差はありませんが、郵送のみで受け付けていることがほとんどなので、時間がかかることが多いです。
4.上場株式・国債・投資信託の調査方法
上場株式や国債、投資信託などの有価証券は、証券会社を窓口として取引されていることがほとんど。調査の最大のポイントは「取引の窓口になっていた証券会社はどこか?」を割り出すことです。
まずは、ざっくりと把握する
亡くなった方(被相続人)が取引をしていた証券会社の手がかりになりそうなものを探します。手がかりになる資料が見つからない場合
取引のあった証券会社に関する手がかりが見つからない場合は、「証券保管振替機構」(略して「ほふり」)で証券会社の照会をします。証券保管振替機構とは、上場株式などの名義変更を一手に引き受けている機関です。
証券保管振替機構に「登録済加入者情報の開示請求」をすることで、証券口座の開設先が分かります。
証券保管振替機構に電話をして、必要書類を取り寄せましょう。
なお、電話で連絡を入れてから結果が分かるまで、少なくとも2週間はかかりますので、注意が必要です。
証券会社でやること
有価証券の取引窓口となっている証券会社のあたりをつけたら、その証券会社へ電話で連絡します。証券会社は郵送での手続きを受け付けているところがほとんどなので、まず電話で連絡して手続方法を確認することが大切です。
【注意点】
- 有価証券の調査は、相続人の一人からでもできます。
- 調査には、亡くなった方と調査する方の相続関係を証明する書類が必要です。事前に戸籍等を用意しておきましょう。
- 戸籍等はコピーではなく原本を郵送することになるので、何も言わずに郵送してしまうと返してもらえなくなる場合があります。
事前に必ず「戸籍の原本は返してください」と伝えておきましょう。書類返却の手続方法も案内してくれます。
残高証明書を発行してもらう
預貯金口座の場合と同様に、保有する有価証券の残高証明書を発行してもらいましょう。電話した際に、「残高証明書を発行してもらいたい」と伝えれば、書類を送ってくれます。
残高証明書の日付は、被相続人が亡くなった日を指定しましょう。
できれば、後の相続手続きで必要になる書類も郵送してもらう
残高証明書などの発行依頼書と一緒に、後の相続手続きで必要になる相続手続依頼書等の書類ももらっておきましょう。証券会社によっては、相続人全員による遺産分けの話し合い(遺産分割協議)が終わっていないと渡してくれない場合もあります。
その場合は、調査が終わって手続きが進んだときに、再度必要書類を請求しましょう。
5.生命保険の調査方法
生命保険は受取金が多額になることが多いので、しっかり調査しなければなりません。生命保険金は、受取人が誰なのかによって、遺産に含まれたり、受取人固有の財産になったりします。
そのため、生命保険契約の有無だけでなく、受取人が誰になっているのかを把握することが重要なポイントです。
【受取人が誰かによって、遺産かどうかが決まる】
- 受取人が亡くなった方(被相続人)になっている場合
生命保険金は、遺産に含まれます。
そのため、相続人全員による遺産分けの話し合い(遺産分割協議)で、誰がどのように取得するのかを決める必要があります。 - 受取人が相続人になっている場合
生命保険金は、受取人である相続人の固有の財産となります。
この場合、遺産分けの話し合いの対象にする必要はありません。
まずは、ざっくりと把握する
亡くなった方(被相続人)が契約していた生命保険の手がかりになりそうなものを探します。受取人が判明したらやること
受取人が亡くなった方(被相続人)になっている場合
相続人のうちの一人から保険会社に連絡して、保険金の請求手続きに必要になる書類を取り寄せます。受取人が相続人の誰かになっている場合
受取人とされた相続人から保険会社に連絡して、手続きに必要になる書類を取り寄せます。生命保険金は発生しなくても、遺産相続手続きの対象になる場合がある
【分かりやすい例】
上記の場合、妻ではなく夫が亡くなったので、生命保険金は発生しません。- 契約者(保険料を負担する人)
亡くなった夫(毎月の保険料は、亡くなった夫が支払っていた) - 被保険者(保険の対象となる人)
妻(妻が亡くなった場合に生命保険金が発生するが、妻は生きている)
が、保険料を支払う義務を、相続人の誰かが引き継ぐことになります。
この場合、契約内容をしっかり確認し、今後保険料を誰が負担していくのか、それとも解約するのかを相続人全員で話し合わなければなりません。
また、生命保険金は発生しなくても、契約者である夫が死亡した時点の解約返戻金に対して相続税がかかります。
相続税申告をする可能性がある場合は、保険会社に解約返戻金の評価証明書をもらいましょう。
6.貸金庫の調査方法
故人が生前貸金庫を契約していた場合、銀行が契約者の死亡を知った時点で、預貯金口座とあわせて貸金庫が凍結されます。貸金庫が凍結されてしまうと、中に遺言書や不動産の権利証が入っていた場合に、銀行の相続手続きを済ませるまで中身が確認できないという事態に陥ります。
遺言書は、本来相続手続きの前提として必要になる重要な書類ですし、権利証だって遺産となる不動産の調査では非常に重要な役割を果たします。
貸金庫が凍結されてしまうと、事前に確認しておくべきこれらの書類を全く確認できないという本末転倒な事態になってしまうのでほんとうに危ないです。
まずは、貸金庫の契約があるかどうか調べる
手がかりになりそうな情報を探します。貸金庫がある場合は、他は後回しにして貸金庫の手続きを最優先に!
生前故人が貸金庫を契約していたことが分かっている場合は、可能な限り銀行に契約者が死亡したことは伝えずに、貸金庫を開けて中身を取り出しましょう。貸金庫のカードが手元にあり暗証番号が分かっている場合や、貸金庫の代理人として銀行に届出している人がいる場合は、貸金庫を開けることができます。
預貯金口座の調査を先にやってしまうと、銀行は口座とあわせて貸金庫も凍結してしまいます。
貸金庫の契約がある場合は、預貯金口座の調査は後回しにして、貸金庫の中身を取り出すことを最優先にしましょう。
凍結された貸金庫を開けるには
被相続人が亡くなったことが銀行に伝わり、貸金庫が凍結された場合は、凍結を解除するための手続きが必要になります。
【貸金庫の相続手続き(凍結解除)の必要書類】
亡くなった契約者(被相続人)の出生から死亡までの戸籍
相続人全員の戸籍謄本
相続人全員の実印
相続人全員の印鑑証明書
(場合によって)遺産分割協議書
一度凍結された貸金庫の中身を確認するには、上記の書類を揃えたうえ、原則として相続人全員が立ち合いのもと貸金庫を開ける必要があります。非常に手間がかかるうえ、遺言書などが入っていた場合は、凍結を解除するまで内容を確認できないことになってしまうので、できれば凍結される前に中身を出してしまいましょう。
7.借金の調査方法
亡くなった方が生前借金をしていたかどうかを把握することは、相続手続きの中でも特に重要です。人が亡くなって相続が発生すると、預貯金や不動産のようなプラスの財産のみならず、借金のようなマイナスの財産も相続人に引き継がれることになります。
しかし、プラスの財産よりもマイナスの財産のほうが多い場合は、プラスの財産もマイナスの財産も含めて一切の相続権を放棄する相続放棄を検討しなければなりません。
亡くなった方の借金を正確に調査することは、相続するか、すべての相続権を放棄するか検討するうえで、きわめて重要なポイントというわけですね。
調査の結果、借金があることが判明した場合は、借金を含む遺産全体の状況や相続人の状況に応じて、遺産をどうするか決めることになります。
借金調査の注意点
調査の段階では、借入先に借金を払う約束は絶対にしないようにしましょう。払う約束をしてしまったり返済の相談に応じてしまうと、相続放棄ができなくなったり、本来は時効によって消滅しているはずの借金を払わなければならなくなったり、というリスクが発生します。
調査の際に借入先から今後の返済方法などの相談を持ち掛けられた場合でも、「遺産を調査中です。」とだけ伝えて、応じないことが重要というわけですね。
まずは、ざっくりと把握する
亡くなった方(被相続人)が遺したものや郵便物から、手がかりになりそうなものを探します。- カード類
銀行のカードローンや消費者金融、クレジット会社のカードはないか? - 請求書や督促状
- 銀行口座の通帳の記載内容
特定の企業や個人名あてに、毎月支払いや引き落としがされていないか? - 不動産の登記簿
抵当権や根抵当権など、不動産を担保に入れた形跡はないか?
信用情報機関に借入状況の開示請求をする
銀行や消費者金融、クレジット会社はそれぞれ「信用情報機関」に加盟していて、借り入れの状況はこれらの機関に登録されています。亡くなった方の相続人は、これらの信用情報機関に故人の借金の状況を開示するよう請求できます。
この開示請求により銀行を含む金融業者への借り入れはおおむね判明しますので、亡くなった方が複数の消費者金融やクレジット会社を利用していた可能性がある場合は、必ず開示請求をしましょう。
開示請求のやり方は、相続人からの信用情報の調査方法のページで詳細がわかります。
被相続人の借金を把握するためには欠かせない手続きなので、ご参考にして下さい。
【各信用情報機関への開示手続き】
- 消費者金融系
株式会社日本信用情報機構(通称:JICC) - クレジット会社系
株式会社シー・アイ・シー(通称:CIC) - 銀行系
一般社団法人全国銀行協会(通称:全銀協)
(※)「本人開示の手続きは」の「法定相続人」をクリックしてご覧ください。
【注意点】
- 亡くなった方との相続関係を証明する戸籍等の書類が必要になります。
- 2週間から1か月ぐらい時間がかかるので、開示請求はすぐに行いましょう。
- 新規の貸し付けを停止している消費者金融などは、信用情報機関を脱退しているケースもあります。
その場合は通帳の記載内容や郵送物から地道に調査するほかありません。
借入先が分かったら
どの金融業者から借り入れをしているのかが判明したら、次は借り入れの額を確定します。各金融業者に、被相続人の死亡日付の借入金残高証明書を請求しましょう。
なお、銀行のカードローンの借り入れは、預貯金口座の残高証明書にあわせて記載されていることがほとんどなので、カードローン分だけの残高証明書は必要ありません。
住宅ローンがある場合
亡くなった方が住宅ローンやアパートローンを組んでいた場合は、団体信用生命保険(団信)でローンを完済できる可能性があります。借入先の金融機関に問い合わせましょう。
キャッシングによる借り入れがある場合
消費者金融やクレジット会社からキャッシングをしていた場合は、法定利息を上回る利息を支払っていた可能性があります。おおむね平成20年(2008年)より以前から利用していた形跡がある場合は、取引履歴を取り寄せましょう。
法定利息に引き直して計算した結果、借り入れが減ったり過払い金が判明するケースがあります。
商売をしていた場合
亡くなった方が個人商店などの商売をされていた場合は、取引先から借り入れをしている場合がありますので、商売で使用していた帳簿類を丹念に確認する必要があります。生前税務申告や記帳を頼んでいた税理士がいる場合は、すぐに連絡して、商売上の借金がなかったか確認しましょう。
なお、商売を引き継ぐことが確実な場合は別として、取引先から今後の返済方法を相談された場合は、安易に応じてはいけません。
「相続することを認めた」として、相続放棄ができなくなるなどの不利益を被る可能性があります。
相続放棄をする可能性が少しでもある場合は、少なくとも調査が終わって遺産をどうするか方針が決まるまでは応じるべきではありません。
友人・知人への借金
友人や知人への借金は、借用書などを作っていない場合も多く、調査が難しいです。もし生前に借金をしていたか不安な場合は、相手先に「生前はお世話になりました」と添えて、故人が亡くなったことを伝える手紙を出してみるのが良いです。
(「お金を借りていましたか?」とまで手紙に書く必要はありません。)
相手先から「生前お金を貸していた」と言われた場合は、借用書などの資料を送ってもらうようお願いしましょう。
本当にお金を借りていたかどうかわかるまでは、慎重に対応すべきです。
誰かの連帯保証人になっていたかどうか
誰かの借金の連帯保証人になっていたかどうかは、遺産の調査で判明することはほぼありません。故人が直接お金を借りているわけではないので、連帯保証人となっていたことが分かるような資料が遺されていないことがほとんどだからです。
もし故人が誰かの連帯保証人になっていた場合は、相続放棄をしない限り、連帯保証人としての地位を各相続人が相続分に応じて引き継ぐことになります。
とはいえ、通常、連帯保証人への請求は、直接お金を借りた人(主債務者)がお金を返さなくなった時にはじめてされます。
請求が来るまでは知りようがないので、粛々と遺産の調査を進めましょう。
請求が来たら、内容をしっかりと確認したうえ、相続放棄ができるかどうか、または相続放棄ができない場合の対処を検討することになります。
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